東京電力福島第1原発の事故ついて、新潟県が独自に設置した事故検証委員会のうち、健康影響について検証してきた「健康分科会」は30日、報告書を大筋で了承した。福島県で数多く見つかっている甲状腺がんについては、「福島原発事故による初期の放射線被ばくに伴う健康影響への対応で重要な問題の一つ」としては「甲状腺スクリーニング」をあげ、「甲状腺がんの過剰診断をもたらす可能性が指摘されている。」として、過剰診断を示唆する一方、被曝による過剰発生についての記述は盛り込まれなかった。
この検討委員会は、新潟県にある東京電力柏崎・刈羽原発再稼働の前提として、米山隆一前新潟県知事が2017年に設置したもの。技術委員会、避難委員会の3委員会のうち、健康影響に関する「健康分科会」の報告書だけが遅れていた。
委員のひとり木村真三獨協大学助教授は議論の途中、十分な検証が足りていないなどとして、審議を継続するよう要請。「中間報告書」とするよう求めたが、一部の内容を追加することなどが了承され、そのまま「報告書」としてとりまとめることとなった。
報告書では、福島原子力事故での放射線被ばくによる甲状腺がん以外のがん及び非がんの健康リスクに関しては「不明な点が多い。」と記載。また「先天異常」「出生異常」は確認されていないとした。一方、放射線防御による健康被害減少の視点から、「避難は最重要事項である。」とした。
米山氏を惹きついた花角英世知事も、柏崎刈羽原発の再稼働の前提として、県独自の検証が不可欠としている。同報告書を含め、3委員会の報告書が知事に提出される予定。