中野真紀子さん(デモクラシー・ナウ!ジャパン代表)
中野真紀子さん(デモクラシー・ナウ!ジャパン代表)
翻訳家。訳書にエドワード・サイードの『ペンと剣』、『遠い場所の記憶』、イスラエル・パレスチナ問題でバイナショナリズムを論じたチョムスキーの『中東 虚構の和平』などがある。佐藤真監督の映画『エドワード・サイード OUT OF PLACE』や映画『チョムスキーとメディア マニュファクチャリング・コンセント』の字幕の監修も担当。
デモクラシ・ーナウ!以前はどんな仕事をされていたのですか?
私は、もともと社内翻訳者。実は金融系企業でビジネス翻訳をやっていました。そんな環境もあって、インターネットとの出会いが早かった。当時は、まだ商業系なコンテンツは少なくて、オルタナティブな感じの言論が広がっていました。チョムスキーを知ったのはその時です。その世界では名高かったし、一番面白いものを書いていましたから。
そんな文章を読みながら、私もいつかは自分の翻訳本を出したいと思うようになりました。欲求不満もあり、当時「寄せ場学会」というのに入っていいたのですが、それがきっかけで、最初の本を出すことになりました。サイードの本も、その仲間と一緒に出すことになったのです。
メディアにはもともと関心があった?
サイードやチョムスキーを翻訳すると、意識的にならざるを得ない。サイードはパレスチナ出身ですが、メディアがどの様にアラブの世界を見せるか、その見せ方が偏見を生んでいると言う様なことを書いています。また、チョムスキーは『マニュファクチャリング・コンセント(合意の捏造)』の中で、商業メディアというものは、一人ひとりの記者が頑張っていると言うレベルではなく、構造的に体制に奉仕してしまう、とを指摘しています。
そんな翻訳をしていた頃に、デモクラシーナウ!を聞くようになりました。インターネットで。とにかく今聞きたいことを流してくれるメディアだった。それで、すっかりファンになってしまいました。
日本版をはじめたきっかけは?
いつかこんな番組に携わりたいなと思っていた頃、佐藤真の映画『エドワード・サイード』の字幕を監修者することになりました。その後、完成上映会をするためにNYへ。場所はDCTV(ダウンタウン・コミュニティ・ティービー)。すると、誰かが、デモクラシーナウ!は、この建物の屋根裏でやっているというじゃないですか。びっくりして、案内してもらったら、確かにスタジオがある。私はすっかり有頂天になってしまいました。しかも、その屋根裏でやっている感じが良かった。番組の質があんなに高いのに、低い予算で本当に少人数で作っていて、ボランティアも沢山参加していた。センスも良かったし。それを見て、親近感と信頼感がわいて、翌年、ニューヨークに押しかけたんです。
デモクラシーナウ!ジャパンを立ち上げて2年になりますね。
はじめの時はとくかく素人だから、いきなりテレビ局に売り込んだりしました。その甲斐あって、朝日ニュースターが流してくれることになりましたが、字幕のつけ方がわからない。アワプラにお世話になったのはその頃です。ネット上で見つけた無料の字幕ソフトを使って作業をしています。
でも今のやり方だと、3週間遅れくらいで番組を放送することになってしまう。あの番組は、毎日、冒頭で紹介されるニュースが面白いのです。速報性が確保できないのが悩みです。ですから、今のままでは未来がない。ケーブルテレビ局などもっと多くの放送局で放送してもらえるようにしたいと考えています。それから、他の団体と得意分野をシェアしながら、色々な挑戦をしたいですね。