小児甲状腺がん
2025/03/28 - 16:05

小児甲状腺がんで量反応関係〜福島の甲状腺検査

福島県で実施している甲状腺検査について検討している専門家会議「甲状腺評価部会」の第24回会合が3月28日、福島市で開かれた。甲状腺検査5巡目までの確定結果が公表され、部会委員の任期末となる今年7月までに、疫学的な解析と報告書が提出されることが決まった。

部会で新たに公表されたのは、2024年12月末までの検査5巡目の結果。穿刺細胞診で一人悪性が増え、50人となった。これにより、甲状腺がんと診断された患者は351人となり、2019年までにがん登録を用いて把握された集計外の患者47人をあわせると、事故当時、福島県内に居住していた子どもの甲状腺がんは、術後に良性だった一人を除き、398人となった。

量反応関係が鮮明に

甲状腺検査評価部会では2019年以降、甲状腺がんになった患者と、同じ条件を満たす甲状腺がんになっていない患者(対照群)とで比較し、基本調査に基づいた個人の被ばく線量にどの程度の違いがあるかを調べる「コホート内症例対照研究」を行ってきた。今回の報告書では4巡目までの解析結果を踏まえていたが、今回は、2024年9月までの5巡目の結果も含めた解析結果を公表した。その結果、多くのモデルで、がんになっている患者の方が、がんになっていない患者(対象群)に比べて、より被ばく線量の高い「量反応関係(Dose and Respons)」が示された。

特に、浜通りに限定して解析した結果では、10ミリシーベルト以上の被曝群で、甲状腺がんとなっている人が、有意に多いという結果となった。しかし、甲状腺部会の委員の間では、唯一、量反応関係が見られないマッチングモデル2の避難区域に限定した解析結果が最も妥当だする考え方が示される一方、浜通りに限定した解析は意味がないのではないかとの声が上がった。

鈴木部会長「症例対照研究」理解していないか

浜通りで有意差が出ていることについて、鈴木元部会長は、対照群(甲状腺がんとなっていない患者)において、10ミリ以上被曝している人数が少ないすぎることが問題であると指摘。これによって、バイアスを生じているとの発言を繰り返した。しかし、症例対照研究では、年齢や受診回数といった条件を調整した上で、病気になったグループと病気になっていないグループを無作為抽出し、被曝量を比較する研究である。被ばく線量も揃えるべきだする鈴木氏の発言は、この研究について理解していない可能性がある。

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