小児甲状腺がん
2023/03/22 - 10:46

甲状腺がんは345人〜県民健康調査データの第三者提供は先延ばしへ

東京電力福島第一原発事故後に福島県で行われている「県民健康調査」の検討委員会が3月22日、福島市内で開かれ、新たに6人が甲状腺がんと診断された。これまでに、県の検査によってがんと診断された子どもは302人となり、がん登録で把握された集計外の患者43人をあわせると、事故当時、福島県内に居住していた18歳以下の子どもの甲状腺がんは345人となった。

新たに公表されたのは5巡目と25歳の節目健診の結果。穿刺細胞診の結果、悪性と診断された患者は、5巡目と節目検診でそれぞれ3人ずつ、計6人増えた。また手術をして甲状腺がんと確定した人は5巡目で9人、節目検診で1人増え、247人となった。

「県民健康調査」検討委員会資料よりOurPlanet-TVが作成

5巡目で悪性ないし悪性疑いと診断された26人の前回(4巡目)の検査結果は、A1判定は8人(30.7%)、A2判定は12人(46.1%)、B判定は4人(15.3%)、未受診が2人(7.7%)で、腫瘍の大きさは7.0mmから46.7mmで、平均腫瘍径は13.6mmだった。

また節目検診で悪性ないし悪性疑いと診断された19人の前回の結果は、A1判定が1人(5.2%)、A2判定が4人(21%)、B判定が4人(21%)、未受信者が10人(52.6%)で、腫瘍の大きさは5.3mmから49.9mmで平均腫瘍径は15.5mmだった。5巡目も節目健診も、最大は5センチ近くまで腫瘍が成長していたこととなる。

データの第三者への提供で試験的な研究開始へ

今回の会議では、学術目的のために「県民健康調査:データの第三者提供に関しての報告があり、ガイドラインやマニュアル、審査会設置要綱など5つの関連規定を策定したと公表した。また、データ提供を行うに際の工数と必要経費などを検証するために、近畿大学医学部公衆衛生生物学教室の今野弘規教授が、試験的に研究を実施すると発表した。

ただ現在のところ、事前相談にもはじまっておらず、来年度中には事前相談に入れたとしても、データ提供までには時間がかかる見通しで、2年間の研究を経て、検証まで済ませるためには、短くとも3〜5年程度かかりそうだ。近畿大学の今野教授が選定されたのは、災害の健康影響に関する調査研究の実績のある研究者から県が選定したという。

第47回「県民健康調査」検討委員会・資料4より抜粋

「県民健康調査」のデータは現在、福島県から委託を受けている福島県立医科大学の研究者のみが、このデータを用いた研究を許されている。しかし、福島県立医大以外の研究者による解析も実施されるべきだとして、2016年5月に、「学術研究目的のための第三者提供のあり方に関する検討部会」を設置。6回の会議を経て、2020年1月に報告書が取りまとめられ、同年7月に検討委員会に報告されていたが、実施するための要綱を検討しているとして、その後、5年間、動きが止まっていた。


配布資料:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-47.html

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