新国立競技場建設を理由に、明治公園から強制退去させられた野宿者とその支援団体が、東京都と国と日本スポーツ振興センター（JSC）を相手に損害賠償を求めていた裁判で、東京地方裁判所は２月２８日、原告らの主張をいずれも退けた。
裁判長が主文のみ言い渡して退席すると、傍聴席からは「ふざけるな！」「時間を返せ！」「人権守れ！」「今まで我々の話の何を聞いていたんだ！」と怒号が飛び交った。２０１８年３月に提訴してから約５年、１７回期日の積み重ねていたが、判決理由も述べられず、わずか１分で閉廷した。
裁判後の記者会見で、吉田哲也弁護士は「人権意識として非常に低い判決」と憤りをあらわにし、「生存権を定めた憲法２５条や国際人権規約１１条があるにも関わらず、”それは政府の努力義務であり、守らなくてもいい”と裁判所は判断した。本当に信用できない人たちだ」と厳しく批判した。
原告の「反五輪の会」の首藤久美子さんは、「納得できない」としたうえで、「野宿者のみんなが寝られる、暮らせる公園のほうが、公益性があるわけですよね。その感覚が、裁判長にはわからないんだなと呆れました」と述べた。強制退去で公園を追い出された原告の野宿者は、「悔しいと思わない。この裁判を通して、生きる強さというのを知った。今後はもっと自分が成長して、謙虚に人に接して、受け入れて、教えてあげたい」と胸をはった。
