渋谷区が渋谷駅に近い公園を相次いで封鎖し、野宿生活者(ホームレス)を締め出していることを受け、野宿当事者や支援者らが27日、渋谷区役所で抗議行動を行った。
声をあげたのは、渋谷周辺で野宿生活者の権利を訴えている市民団体「ねる会議」のメンバーら。「渋谷区の野宿者襲撃を許さない」「渋谷区は人命を守れ」など思い思いのプラカードを手に、現在、利用禁止とされている神宮通公園を再開するよう求めた。
最初に排除が行われたのは、渋谷駅から徒歩5分ほどの区立美竹公園。ヒューリック、清水建設で構成されるグループ「Link Park」と70年間の定期借地権設定契約を結び、来春から大規模な再開発工事に入ることが決まっている。これらを理由に、渋谷区は今年の10月25日、突如、美竹公園を利用禁止にし、そこで生活していた野宿者を締め出した。
法的根拠なく、野宿者の荷物を持ち去り
さらに渋谷区は今月14日、美竹公園から退去を求められた野宿者らが避難していた区立神宮通公園を利用禁止とし、特に法的な根拠を示さずに、渋谷区職員らが、野宿生活者の私物を強制的に撤去し、野宿者や支援者を締め出した。また20日には、美竹公園の行政代執行を実施。高さ3メートルもの仮囲いをし、公園は完全に封鎖された。
野宿当事者と支援者らは、寒さが厳しい冬の時期に、敢えて寝床や寝具、衣服や靴などを奪うことは、野宿生活をしてる人間の命を危険にさらすものだと厳しく批判。年末年始を迎える今の時期に、公園を突然封鎖するのは、人権侵害だとして、神宮通公園の利用禁止を即座に解除するよう求めた。
多様性を唱えながら、野宿者は排除〜渋谷区長
渋谷区の長谷部健区長は、全国ではじめて、パートナーシップ条例の創設を唱え、「ダイバシティー(多様性)」を推進している姿勢が評価を集めている。その一方で、区議時代から、公園から野宿者を排除する政策に力を入れ、スポーツメーカー「ナイキ」とネーミングライツ契約を結ぶなどして、公園の浄化や施錠を推し進めてきた。
区長に就任してからは、渋谷区の「浄化」をさらに進め、かつては緑が覆い茂り、デモの出発地としても知られていた「宮下公園」は今、三井不動産が開発したショッピングモールとなり、「公園」として機能は完全に失われた。毎週末に炊き出しが行われてきた美竹公園もまた、大規模再開発により、公園の機能は失われる。
神宮通公園は今月14日に突然、区長名で利用禁止となったが、その理由は明白ではなく、野宿者の支援者らは、目障りな野宿者を排除したいという理由しか考えにくいと批判する。