放射線審議会は2月18日、4年ぶりに、政府の放射線防護の指針となる文書の改訂版をとりまとめた。放射線防護委員会(ICRP)が原発事故などの復旧期(現存被曝状況)の「目標値(参考レベル)」として示していた「1~20 mSvのバンドの下方部分」との文言を削除し、「年間 1~20 mSv のバンドの下半分」と修正する。
今回、改訂が行われるのは、「放射線防護の基本的考え方の整理-放射線審議会における対応」。福島原発事故後、各省庁にまたがって様々な基準が乱立したことなどを背景に、4年前に策定された。今回は、ICRPが昨年1月に公表した新勧告「パブリケーション146」の反映などを目的に改訂作業が行われた。
放射線防護をめぐっては、ICRPが2007年、チェルノブイリ原発事故の経験をもとに、「パブリケーション109」と「パブリケーション111」の2つの勧告を公表し、それぞれ事故直後の「緊急時」と復旧期の「現存被曝状況」の放射線防護基準を提示。「現存被曝状況」の参考レベルは「1-20 mSv(年間)のバンドの下方部分」と定め、代表的な値は「年間1mSv 」としてきた。
1ミリから10ミリへ大幅な緩和
しかし、福島原発事故を受けて策定された「パブリケーション146」では、「1-20 ミリ(年間)のバンドの下方部分」との記載は消え、「下半分」と記載。今回、改訂される「考え方の整理」でも、それに合わせた。この「下半分」は当初「10mSv」という数字だったことがOurPalnet-TVの取材で判明しており、従来の「1mSv」から「10mSV」に基準が10倍緩和される。
「年間1ミリシーベルト」という数字をめぐっては、これをもとに、国が、毎時0.23マイクロシーベルトを除染目標に設定してきた。これに対し、放射線審議会の委員からは、「住民がこの数字を安全基準と勘違いしている」「数字のひとり歩き」など、批判の声があがっていた。
改訂版は月内にも確定して、原子力規制庁のホームページに掲載される。放射線審議会の会長で、ICRP委員でもある甲斐倫明大分看護大学教授は会議の中で、「ICRP2007年勧告」でまだ法律の取り込みがなされていない課題を整理するよう事務局に指示。「緊急時被曝状況」や「現存被曝状況」などの考え方について、法制化を進めるものと見られる。