アサダワタルさん(事編kotoami主宰/元・大和川レコード)
アサダワタルさん(事編kotoami主宰/元・大和川レコード)
1979年生まれ。「日常再編集」をテーマに、映像、音楽、テキストなど様々なメディアを用いたパフォーマンス、実社会に根ざしたプロジェクト型の表現を主体に活動。築港ARC、カマン・メディアセンター、住み開きアートプロジェクトなどを運営。バンド「SJQ」メンバーとしても活動中。
去年オープンした「カマン!メディアセンター」とは?
「カマン!メディアセンター(かまめ)」は、大阪のドヤ街「釜ヶ崎」の商店街にあります。文房具屋だった店を改装して路面にテレビを置き、町のおっちゃんらが井戸端的な会話のできる場を、と始めました。
僕がやっているのは、YouTubeから古いテレビ番組をひっぱってきて、プレイリストをつくり、それを延々流すだけ。メディアセンターといっても、ビデオで何かを作っているというわけではありません。でも、その映像をきっかけに、人が集いコミュニケーションが生まれる。おっちゃんたちがどんな番組に興味を示してくれるか、試行錯誤しながら選んでいます。
次々にユニークな活動をはじめていますね
もともと僕は、普通に会社に入って働くのは嫌だったんですね。大学卒業後は、しばらく出版社でDTPの仕事をしていたのですが、ちょうど同じ頃から、ココルーム(こえとことばとこころの部屋)に通うようになりました。ここでの活動を通じて、アートにも「自分の作品を売る」のではなく、社会と関わりのある別の表現方法があるのだということに気づきました。
その一方で、与えられた仕事をこなすだけの職場と、ココルームやバンドなどでの表現活動がかけ離れていることにずっと違和感があった。ちょうど悩んでいるときに、ココルームでスタッフを募集するというのを聞き、飛び込みました。月給8万円の生活だったけど、食べ物はあるから、生活はできるんですよ。
日常と表現をつなげる?
僕のテーマは、一貫して「日常を再編集する」というもの。大学でバンドをやっている時代から、日常の音を集めてきてサンプリングするような音楽を路上でやっていました。「カマン・メディアセンター」の活動も「住み開き」も、今、存在しているものを「使いなおす」とか、表現として「拾い上げる」活動。10年前は、音の素材レベルだったものが、今は広い社会を対象とするようになったということかな。全国さまざまな地域で、この「再編集」をしながら生きていくのが、理想ですね。