福島第一原発事故により「被ばくし、精神的な被害を受けた」として、双葉町の井戸川克隆前町長が国と東京電力に対し、慰謝料など約1億5000万円の支払いを求める裁判を東京地裁に提起した。
井戸川氏は提訴後に記者会見し、「東日本大震災前に、東京電力前は私の執務中に区長室で、「事故は絶対起きない」と約束したので安全と信じていた。町民に大変申し訳ない」と述べた上で、原子炉に注水が不可能となった3月11日の夕刻には、国や東電は避難指示を出すべきだったと、事故後の対応を批判。3月12 日午後 2 時 40分、原発から 5.6 キロ離れた双葉町上羽鳥のモニタリングポストで毎時4600マイクロシーベルトが観測された事実を挙げ、「平常値より9万2000倍のところで被ばくしたが、私たちを、正確に誠意をもって、被ばく検査をしたことはない」と被ばくへの訴えた。井戸川氏は、鼻血やのど、甲状腺、皮膚などに異常があり、脱毛が続いていると自身の体調を説明。「私以上に苦しんでいる人がいる。そういう人の道しるべになりたい。」と力をこめた。
また裁判のタイミングについて、政府が、年間20ミリシーベルトいう基準で避難解除を強行しようとしていることなどをあげ、「国は意見を聞かずに政策を決めている。同じような思いをしている人のために立ち上がった」と説明した。
弁護団によると、事故直後のベントや水素爆発によるいわゆる「初期被ばく」で精神的被害を受けたとして賠償を求める訴えは、初めて。弁護団は、この裁判を契機に、恒久的な補償制度の確率や、徹底的な原因究明明確な健康管理体制へつなげたいとしている。