福島県が実施している甲状腺検査で、治療が必要となった患者に支給している「甲状腺サポート事業」をめぐり7日の常任委員会で、県の佐藤宏隆保健福祉部長は「医療費を交付した233人は全て甲状腺がん(または疑い)」との12月議会の答弁が誤りだったと謝罪した。
また12日の委員会でも、佐藤部長は、「極めて重要な検査の数値の答弁を誤った」のは、「決して小さくない」「本来あってはなならいこと」と弁明した。一方、医療費を交付している233人のうち、手術を受けた82人以外が、どのような患者なのかについては明らかにしなかった。
甲状腺検査サポート事業の交付実態、不透明なまま
12月議会で、「233人全てが甲状腺がん」と回答した鈴木陽一保健福祉課課長。議会終了後のOurPlanetTVの取材に対し、「甲状腺サポート事業は、福島県民健康調査の甲状腺検査とセット。検査が、甲状腺がんのみを対象としている以上、交付対象も甲状腺がん疑いに限定しているのは当然。それは最初から変わっていない」と述べていた。
また、OurPlanetTVが、日本甲状腺学会誌に掲載された論文「甲状腺結節取り扱い診療ガイドライン」に掲載された「甲状腺結節の組織学的分類」を示しながら、交付対象となる内容を確認した際も、手術後の病理診断まで確定診断が難しい「濾胞腺腫」を除き、「悪性腫瘍」以外には交付されないと回答していた。
Ⅰ. 腫瘍性病変
1. 良性腫瘍
濾胞腺腫
2. 悪性腫瘍
● 乳頭癌 ● 濾胞癌 ● 低分化癌 ● 未分化癌 ● 髄様癌 ● 悪性リンパ腫
3. その他の腫瘍・分類不能腫瘍
Ⅱ. 非腫瘍性病変
1. 腺腫様結節、腺腫様甲状腺腫
2. アミロイド甲状腺腫
3. 嚢胞
「甲状腺結節取り扱い診療ガイドライン」より
http://www.japanthyroid.jp/common/20100102_03.pdf
答弁が撤回されたことに関連していわき選出の古市三久議員は、交付を受けた233人のうち、交付対象となる18歳になる前に手術を受けた人数について質問。しかし鈴木陽一保健福祉課課長は、「震災当時12歳~18歳の方で交付が233人で、手術が77人」と、質問の答えとは異なる内容を回答し、答弁しなかった。
また手術を受けていない151人の中で、穿刺細胞診を受けたのは何人かとの質問に対しても、「把握してない。確認する。」と回答。穿刺細胞診を受けて、悪性または悪性疑いと言われた人は何人かとの質問に対しても、「先行検査で166人。本格検査の検査2回目で71人。本格検査の検査3回目で18人。節目の検査で2人。」と、すでに検討委員会で公表されている県民健康調査の人数を繰り返した。さらに、「結節性病変について、穿刺細胞診を受けず、超音波で経過観察となっている結節性病変の数は分かりますか?」との質問についても「数字を持っていない。」と答弁しなかった。
甲状腺検査サポート事業の要項によれば、交付対象者は、「甲状腺しこり等(結節性病変)があり、医療機関で当該病変に係る保険診療を受けている」人だが、申請できる医療費は、「甲状腺がん(疑い)に係る保険診療の医療費」と「甲状腺がん(疑い)に限定している。また、申請者向けのQ&Aには、「県民健康調査甲状腺検査は、原発事故により甲状腺がんのリスク増加が懸念されたことから開始されました。甲状腺検査を契機に発見された「がん」以外の甲状腺疾患が、この検査において発見される場合もありますが、県の検査は本来その発見を目的とするものではなく、結果として、早期発見・早期治療につながったものと考えられることから、県民健康調査甲状腺検査サポート事業の対象にはなりません。」と記載し、甲状腺がん以外の甲状腺疾患は対象にならないとしている。
12月議会の答弁により、これまで公表されてきた甲状腺がん(疑い)が(2016年3月時点で199人)、実際には72人も多いことと報道されたことを受けて、答弁を修正した可能性がある。
甲状腺サポート事業
http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/kenkocyosa-kojyosen-support.html