住民の個人線量データが、本人の同意を得ずに論文に使用されていた、いわゆる「宮崎・早野論文」問題をめぐり、伊達市議会は26日、問題解明に向けて特別委員会の設置を決めた。市が設置した「調査委員会」の調査経過が見えない中、同問題をリードしてきた議会が本格的に検証に乗り出す。
議会最終日に全会一致で設置が決まった「被ばくデータ提供等に関する調査特別委員会」」。地方自治法98条に基づいたもので、地方自治法第100条に規定された100条委員会のような強力な調査権限は有さない。しかし、議会として正式に同問題を位置付けたことで、市の調査委員会に報告を求めることができるようになった。須田博行市長は閉会の挨拶で「特別委員会設置に関して真摯に対応していく」と述べた。委員は7人で、議会の閉会中でも開会できる。
調査をリードしてきた市議会
「宮崎・早野論文」をめぐっては2017年6月以降、現在、議長を務める高橋一由議員が、仁志田昇司市長(当時)や半澤隆宏直轄理事(当時)を相手どり、2年にわたって、激しい質疑を展開。伊達市民の外部被曝線量データが、市の正式な手続きを経ずに研究者に提供された疑いがあるとして追求を続けてきた。その結果、昨年12月議会において、高橋議員が「同意」していない市民のデータが論文に使われていたことを突き止めるなど、同問題を解明する上で大きな役割を果たしてきた。
市の調査委員会設置後は、同論文の誤りを指摘してきた黒川眞一高エネルギー加速器研究機構(KEK)名誉教授を招聘して勉強会を開催するなど、非公式な立場で問題に取り組んできた。しかし、5月に招聘した論文著者の宮崎真福島県立医科大講師は、議会の出席要請を拒否。市民の代表として十分な権限を発揮できずにいた。今回の特別委員会の設置で、公式に調査の枠組みができたことで、今後、市当局とは異なる独自の取り組みを行う可能性もある。なお市の調査委員会は7月11日に開催される予定。
調査特別委員会の顔ぶれは、佐藤清壽(共産党)、小野誠滋(伊達市民クラブ)、佐藤実(創志会)、大條一郎(フォーラム伊達・公明)、八巻善一(きょうめい)、中村正明(無会派)、菊地邦夫(副議長)の7人。副議長の菊池邦夫議員が委員長を兼任する。