福島県在住の小・中学生らが、年間1ミリシーベルトを下回る地域での教育を求めて、国や福島県、市町村を訴えている裁判(子ども脱被曝裁判)で、福島県立医科大学の山下俊一副学長と甲状腺専門医の鈴木眞一教授の証人尋問が決まった。
この裁判は、福島県内の子どもとその保護者が約170人が、国、県、市町村を訴えているもので、初期被曝の責任と被ばくをせず教育を受ける権利の確認の2つの内容が争われている。
初期被曝の責任を問う裁判では、国や県が適切な防護措置を講じなかったことで、子どもたちに無用な被曝をさせた精勤を追及。SPEEDIの情報を正しく提供しなかったことや、子どもたちに安定ヨウ素剤を服用させなかったことに加え、福島県の放射線リスクアドバイザーに就任した山下俊一氏の講演が争点となってる。
裁判では今年2月の裁判では、山下氏が「毎時100マイクロシーベルトまで大丈夫」「にこにこしていれば、放射能は来ない」「マスクは不要」などと述べた当時の講演の様子を記録したビデオを、約1時間にわたって上映。法廷内には、事故当時を思い出した保護者のすすり泣く声が響いた。山下氏の尋問は来年3月4日。当時の発言のほか、福島県民健康調査などについての尋問におこなされる見通し。
福島県が主催した山下俊一氏の講演(2011年撮影)
一方、鈴木眞一氏は、甲状腺がんの実態を明らかにする目的で尋問が決まった。現在、福島県が実施している県民健康影響では、がんと診断された人数が不透明な上、「取らなくても良いがんを摘出している」との過剰診断を理由に、「被曝との関連性」を否定している。尋問では、手術実態などについて確認する見通しで、日程は未定。9月の進行協議で決定する。国や県は、鈴木氏の証人尋問を嫌がっており、日程を理由に尋問を拒否する可能性もある。
裁判の焦点は「セシウムボール」
裁判では、福島原発事故後、明らかになってきた「放射性微粒子」の存在が、大きな焦点となっている。チェルノブイリ原発事故では、ガスとして放出された放射性セシウム。しかし、福島原発事故では、数ミクロン以下の小さな微粒子に封じこめられた状態で飛散したことが、最近の研究でわかってきた。福島県内や東京都の土壌を解析した結果、9割以上が、こうした「放射性微粒子」だったという。
この「放射性微粒子」は、「ホットパーティクル」や「セシウムボール」とも呼ばれ、一粒子あたりの放射性セシウムの濃度は、汚染土壌粒子等に比べかなり高い。しかも、水に溶けない不溶性だという。
従来、放射性セシウムは水溶性であることを前提に、体内に入っても尿として排出されると考えられてきた。しかし、不溶性であれば、体内の取り込まれた場合、水に溶けないまま体内に残り、高い内部被曝を引き起こす恐れがあると原告は主張している。
原告の通学する学校周辺の不溶性セシウムボールを調査した河野益近さん
原告らはすでに、通学している学校周辺の土壌調査結果を証拠提出。、これら土壌のうちの9割以上が、「放射性微粒子」であったことを立証しており、調査に当たった専門家なども法廷に立つ見通しだ。子ども脱被曝裁判の尋問期日は、10月1日(火)、11月13日(水)、12月19日(木)、1月23日(木)、3月4日(水)。いずれも10時から福島地裁で行われる。
5年前に提訴時の映像
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