原子力規制委員会は10日、原発再稼働の前提となる原発の「新規制基準」の条文案を提示した。防潮堤や免震重要棟などは、今年7月以降の審査申請と同時に義務づけられるが、中央制御室の代替施設である「緊急時制御室」など大規模な設備については、5年間の猶予を与えるとした。明日11日から5月10日まで30日間、パブリックコメントを実施し、新たな規制案を正式に決定する。傍聴した市民からは、度々激しい抗議の声があがった。
原発の「新規制基準」は、東京電力福島第1原発事故を受けて、既存の規制基準では不十分であるとの教訓から、原子力規制委員会がより厳しい基準を策定し、7月の施行に向けて議論がされてきた。施行後は、既存の全ての原発に適用させ、基準に達しない原発は、電力会社が改修計画をたて、原子力規制委員会の審査を経て改修工事をし、その後さらに審査を行う再稼働の前提となるもの。基準を満たすには、数年がかかると見込まれていた。
しかし、原子力規制委員会は3月19日に、一部の施設設置に5年の猶予期間を設ける方針を提示。また、関西電力大飯原発3、4号機については、同基準の例外とし、9月予定の定期検査終了までは「新規制基準」を適用させずに運転を継続させる方針を示していた。
この日「5年猶予」について、原子力規制委員の間で議論されるのではと、傍聴席には70人ほどの市民が詰め掛けた。しかし、委員会では一度も、「5年猶予」の理由や根拠に関する議論がないまま、内容が読み上げられたため、傍聴席からは「なぜ5年猶予なのか説明しろ!」と次々に抗議の声が上がった。また、配布資料で「5年猶予」の箇所が黒塗りになってしまうなど、一部印刷に不備があり、傍聴席からは「黒塗りでわからない!説明してください!」と声が上がった。
原子力規制委員会の田中俊一委員長は、会見で印刷の不備を謝罪。「5年猶予」に関しては「基本的な安全対策はできている。さらなるバックアップ対策として、より安全なものを5年の間にやってくださいということ」と説明した。
原子力規制委員会の傍聴を続ける「原子力規制を監視する市民の会」は、委員会後、田中俊一委員長と委員宛の「5年猶予」撤回を求める要請書と2933筆の署名を提出した。同会の阪上武さんは、「バックアップ対策だから5年猶予していいというのはおかしい。規制当局が、再稼動に対する便宜を図っている。撤回すべき」と訴えた。
今回パブリックコメントに付される条文案などは、1500ペ―ジを上回る量。パブリックコメントの期間がわずか1ヶ月しかないことに対しても、批判が相次いだ。
配布資料「新規制基準において新たに要求する機能と適用時期」(案)
※一部、配布された資料「下部の5年猶予についての説明が黒く読めない」
http://www.ourplanet-tv.org/files/20130410-01.pdf
※委員会終了後、再配布された資料
http://www.ourplanet-tv.org/files/20130410-02.pdf
意見公募(パブリックコメント)
原子力規制委員会設置法の一部の施行に伴う関係規則の整備等に関する規則(案)等に対する意見募集ついて(5月10日まで)
http://www.nsr.go.jp/public_comment/bosyu130410_03.html
原子力規制委員会設置法の一部の施行に伴う関係規則の整備等に関する規則(案)等に関連する内規に対する意見募集について(5月10日まで)
http://www.nsr.go.jp/public_comment/bosyu130410_02.html
原子力災害対策指針(改定原案)に対する意見募集について(5月9日まで)
http://www.nsr.go.jp/public_comment/bosyu130410_1.html
【ノーカット版】第2回原子力規制委員会