水俣病の症状を訴えながら、患者認定されなかった新潟市と新潟県阿賀野市の男女2人が国と県、原因企業である昭和電工に損害賠償を求めた新潟水俣病3次訴訟の控訴審判決が23日、東京高裁であった。斉木敏文裁判長は、一審の新潟地裁判決を支持し、原告側の控訴を棄却した。昨年11月、同じ東京高裁で、50%以上水俣病の可能性があれば患者認定すべきだと判断した行政訴訟判決と大きく判断が分かれた。
判決では、水俣病の原因であるメチル水銀に暴露していた判断基準として、同居家族内に認定患者がいることなどを条件にあげた上で、原告2人は、生活環境などから魚介類を多食していたとは認められないと判断。また感覚障害についても、メチル水銀暴露との因果関係には、合理的な疑いが残るとなどととして、「水俣病に罹患しているとは認められない」と結論づけた。
新潟水俣病3次訴訟は2007年に提訴され、1審判決では原告11人のうち7人を患者と認定。昭和電工に総額2420万円の賠償を命じた。この11人のうち一部勝訴した原告を含め10人が控訴していたが、そのうち8人は患者認定を求めて新潟市を相手どった別の訴訟を提起。昨年11月に、その控訴審判決で勝訴し、賠償請求訴訟の訴えを取り下げたため、2人が原告として残っていた。
新国の責任は一度も認められず
熊本の水俣病よりも遅く見つかった新潟水俣病。病気が発見された時にはすでに、工場排水が停止されていたこともあり、国の責任は過去2度の地裁判決でも国の責任を否定していたが、初の高裁判決でも否定された。
弁護団長の高島章弁護士は、「(患者の認定を狭めている)環境省の通知そのものだ」「不当判決」と述べ、「行政訴訟で良い判決が出ていたあとだけに残念だ」と肩を落とした。