報告集会に出席する原告の男性
東京電力福島第一原発事故収束作業に従事した元作業員の男性が、白血病を発症したのは被ばくによるものだとして、損害賠償を求めた裁判が2日、東京地裁で始まった。東京電力などは裁判所に、訴えを棄却するよう求めている。
訴えたのは、2011年10月から2年2ヶ月、2次下請けの作業員として福島第1、第2原発や九電玄海原発で溶接などを担当していた42歳の男性。2014年1月に急性骨髄性白血病と診断を受け、その後、原発での作業と白血病との因果関係が認められ、労災認定を受けていた。損害賠償に踏み切ったのは、男性は労災認定を受けた際、東京電力が「我が社とは関係ない」との趣旨のコメントを出したことに怒りを覚えたためという。
男性は法廷で、東京電力の事故収束作業について、被ばくを防ぐための鉛のベストが足りないなど、劣悪な労働環境だったと述べ、「福島のために何とかしたいと思って福島原発時の収束作業に命がけで取り組んだ私たちを、このような無用な危険にさらしておきながら、自分の責任を顧みない東電らには強い怒りを覚える」と語気を強めた。
訴状によると、男性の外部被ばく線量は、福島第1原発で約15.7ミリシーベルト、累積で約19.8ミリシーベルト。「東電や九電は安全対策を怠り、無用で過大な被ばくをさせた」として、東電と九電合わせておよそ5900万円の賠償を求めている。
白血病と診断された時、小さな子どもを残して死ぬのかと思うと涙があふれたという男性。「死ぬかもしれないという恐怖や、妻と子どもたちを置いて行くことになるかもしれないという悔しさから、夜も眠れない日が続き、最後はもう生きていてもしょうがないじゃないかとまで思うようになった」と声をふるわせた。男性は、骨髄移植など無菌室での厳しい治療を受け、長い間、子どもとも会えず、病院の窓から飛び降りたいという気持ちがわくなど不安定となり、うつ病とも診断されたという。
男性は「他の作業員のためにも、いま声を上げる責任があると思い、この裁判に踏み切った」「この裁判で、東電らの体質を明らかにし、その責任を認めさせることで、今後このようなことが繰り返されないよう求める」と語った。
これに対し、東京電力と九州電力は訴えを退けるよう求め、今後、具体的な反論を行うことにしている。次回の口頭弁論は4月27日午前11時から東京地裁で行われる予定だ。