小児甲状腺がん
2015/03/25 - 07:30

甲状腺がん109人「放射線の影響とは考えにくい」~福島県・評価部会

東京電力福島第1原発事故に伴い、事故当時18歳未満だった子どもを対象に行っている福島県の甲状腺検査について24日、専門家による評価部会が中間報告をまとめた。報告書によると、2011年秋から2013年までの3年間にわたって実施された先行調査で見つかった甲状腺がん109例について、「放射線の影響とは考えにくい」と評価した。また、本格調査に入ってから見つかった8例については、「被ばくによるものかどうか結論付けることはできない」としている。

報告書、保護者の期待に応えず
中間報告は、「1、先行調査で得られた検査結果、対応、治療についての評価」「2、放射線の影響評価について」「3、医療費について」「4、対象者の追跡」「5、検査結果の開示」の5項目について言及。福島県内の保護者が不信を招く要因となった、情報公開やエコー写真の提供、検診の手法そのものについては全く触れられなかった。

「1、先行調査で得られた検査結果、対応、治療についての評価」では、甲状腺乳頭がんは「生命予後が良いがんである」とした上で、「過剰診断」が生じるといった不利益の面があることも説明した上で、検査を受けてもらう必要がある」と提言した。肺転移やリンパ節転移など重症例が多数生じてきることについては、言及されなかった。

甲状腺発生数データの評価せず、結論
また先行検査で109例の甲状腺がん悪性・悪性疑いが出ていることについては、「1986年のチェルノブイリ原発事故と比べて被ばく線量が少なく、放射線の影響を受けやすい5歳以下でがんが発見されなかった」ため、「放射線の影響とは考えにくい」と結論づけた。ここでも、通常より男子の割合が多いことや地域によって発生率に差があることなどについては、触れられなかった。

報告書では今後、被ばくと因果関係があるのか、ないのかを検討するに際し、「どういうデータ(分析)によって確認できるのか」「考え方を予め示す必要がある」としているが、同評価部会を継続させるのか、今後、どのように評価する仕組みを整備するのかについて具体的な提言はなかった。

被曝との因果関係立証に最低10年見通し
評価部会後の記者会見で、清水一雄座長は、被ばく影響であるかどうか因果関係の解明には最低でも10年はかかるとの見通しを示した。一方、検討委員会の星北斗座長は、「なるべく早くに、放射能との関係はなかったと結論を出して、検査を終えたい」と述べた。

福島県民健康調査の甲状腺検査とは
2011年10月から開始。先行調査(1巡目)では、18歳以下の約36万人を対象に実施し、これまでに約30万人受診。2月12日までに109人が悪性・悪性疑いと診断され、手術を終えた86人が甲状腺がんと確定した。甲状腺がんと86人のうち、83人が乳頭がん、3人が低分化がんと診断されており、肺に転移している子が2人、リンパ節に転移しているなどの重症例が7割とされている。
また2014年から始まった2巡目の本格検査では、、昨年末までに約10万人が受診。2月12日までに結果が判明した7万5000人のうち、穿刺細胞診によって8人が「悪性・悪性疑い」と診断された。そのうち1人は手術を終え、術後の組織検査にて乳頭がんであると確定している。
福島県民健康調査は、平成23年度第二次補正により国から福島県に交付された782億円により創設された「福島県民健康基金」によって実施されている。(積み増しで現在約1000億円)

福島県外の市町村に対する国からの同様の支援策はなく、現在、栃木県日光市や茨城県牛久市、千葉県松戸市などが独自施策として、子どもへの甲状腺検査助成事業を実施している。このため、関東では、市民団体や生協などが協力して「関東子ども健康調査支援基金」を設立し、独自に検診を行っているほか、各地の市民グループ、生活クラブやパルシステムといった生協、一部の医療機関などが独自に甲状腺検査を実施している。

福島県「県民健康調査」検討委員会・甲状腺検査評価部会について
https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/kenkocyosa-kentoiinkai.html

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