原発事故に伴う住民の健康調査に関して検討している専門家会議で20日、中間とりまとめ案が公表された。福島県民健康調査についての具体的な見直し案が示されなかった一方、甲状腺検査に伴う精神的な負担に配慮すべきとする文言が記載された。また福島県の隣接県での検診については実施せず、不安解消策を強化するなどとした。
中間とりまとめ案では、被ばく線量評価に関してUNSCEARの評価が信頼が高いと認定。またリスク評価については「原発事故に伴う追加被曝の健康影響は予想されない」との内容を採用した。一方、最も高い被曝線量を受けた小児の集団では、甲状腺がんの罹患リスクが若干増加する可能性が理論的にはあるため、今後甲状腺検査を実施し見守っていく必要がある」としている。
放射線による健康影響については、県民健康調査の甲状腺検査において、詳細なコホート調査が必要だと提言。こうした臨床データを確実に収集し、長期にわたって対象集団を観察できる整備が重要だとした。しかし、福島県で36万人の子どもを対象に実施されている甲状腺検査については、「通常発見されない早期のがんを見つけてしまう」として、検査により心身の負担につながるといった内容が盛り込まれた。
福島県外での検診については、「被曝リスクは福島県内よりもさらに小さい」として、「偽陽性に伴う追加の検査や不安等の様々な問題を生じうるため、施策として一律に実施するということについては慎重になるべき」と判断。強い不安を持つ住民に対しては、健康相談とリスクコミュニケーションを通じて、放射線に対する不安対策に取り組む必要があるとした。
とりまとめ案は、検診のマイナス面を強調する内容となったため、会場の傍聴者からは抗議が殺到。特に、これまでがん検診の受診率向上を強く推奨してきた大阪大学の祖父江教授が、今回の甲状腺検査に対しては、過剰診断や検診の不利益を強調し続けているとして、反発の声が相次いだ。
次回の開催は11月26日。事務局の得津馨参事官は、委員からの意見をメールを受け付けた上で同案を修正し、年内には提言をまとめたいとしている。
配布資料
http://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01-12.html
東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議サイト
http://www.env.go.jp/chemi/rhm/conf/conf01.html