ノーベル平和賞を受賞したIPPNW(核戦争防止国際医師会議)の生みの親で、医師のヘレン・カルディコット博士が19日、東京都内で会見し、子どもや妊婦は高線量地域から速やかに避難すべきと訴えた。
「福島の事故は人類の歴史上最悪の産業事故」と切り出したカルディコット博士は、現在も直、放射線量の高い地域に人が住んでいる日本の状況について、「日本政府が守っているのは国民ではなく東電」と厳しく批判。「ロシア政府は積極的に避難させて、国民を守った」と、チェルノブイリ事故後のソ連政府の対応よりも、問題があるとの考えを示した。
また、福島県が実施している18歳以下の子どもに対して行っている甲状腺検査で、40%の子どもになんらかの異常が見つかっている問題に関して、小児科医である博士は「極めて稀な数値」と指摘。子どもや妊婦、また子どもを産める若い女性たちに対して、「移住のための費用を国が負担すべき」と強調した。
活動家としても、医師としても著名なカルディコット博士だが、衆議院議員会館で開催された記者会見に参加したジャーナリストはわずか20人ほど。国会が解散したことも影響し、マスメディアからの参加はほとんどなかった。しかし、前日、都内で開催された市民向けの講演会は満席状態だったことと比べると、大きな温度差がある。
博士は、こうした日本のメディアの姿勢に関しても「責任を果たしていない」と言及。原発作業員の放射線被害に関する情報が公開されていないことにもついて「それが可能になるかどうかはメディアによるところが大きい」と情報公開の必要性を訴えた。