2012/05/30 - 23:38

「命の問題だ」生活保護バッシングに緊急会見

芸能人の母親の生活保護受給報道を契機に、テレビで連日、生活保護不正受給報道が続いている現状に対して、生活保護問題対策全国会議は30日、抗議の緊急記者会見を開いた。今回の生活保護たたきによって、生活保護へのイメージを悪化させているとして、「生活保護を必要とする人が申請しづらくなる。命の問題だ」と抗議した­。
 
NPO法人自立生活サポートセンター・もやい代表の稲葉剛さんは、「政治的な背景がある」と解説。「メディアが騒ぎ、自民党が取り上げて、政府がそれに乗っかっていくという恐ろしい状況になりつつある」近年の日本社会で「日本型の新型自己責任論が広がって来ている」と危機感を表明した。
 
生活保護をめぐっては、今年4月、自民党の片山さつき議員と世耕弘成議員がメンバーの「生活保護問題に関するプロジェクトチーム」が、生活保護給付水準の10%の引き下げや、医療費の抑制、食費や被服費の現物支給化、保護期間の「有期制」の導入などの施策を打ち出している。さらに、芸能人の記者会見が開催された25日に、小宮山厚生労働大臣が、受給者を親族扶養や、自治体が調査権限の強化などに関して、法改正を検討するという考えを示している。
 
一方、今年3月に日本テレビを退職した水島宏明法政大学教授は、一連のテレビ報道について、取材者側の偏見、誤解、不勉強を指摘。生放送された芸能人の記者会見で、レポーターが『恥ずかしくないのですか?』という質問をしたことに対し「生活保護は恥ずかしいものだというメッセ―ジを国民に伝えた。制作者側は差別的な発言であるという意識を持っていない」「連日、生活保護問題を報道しているのに、この会場に、テレビカメラが一台もないこと自体、今のテレビ局の抱える問題を象徴している」と憤った。
 
また、弁護士の林治さんは、「今でさえ、生活保護に関しては恥ずかしいと受給を申請しない人が多い。今回の件で、ためらう人が増えれば、餓死者が出ることにもなりかねない。」と懸念を表明した。
 
生活保護受給者で現在仕事を探している男性(50代)は、バッシングによって就労することがさらに難しくなっており、「普段のスーパーでの買い物でも後ろめたさを感じているのに、報道を見て、精神的に追い詰められている」と苦しい気持ちを訴えた。
 
また、去年まで生活保護を受けていた女性(40代)は、「報道では生活保護をもらう人の列を写すが、列を並んでいる一人ひとりが、どんな暮らしをしているのか考えて欲しい」と訴え、衣服などを現物支給にする案に関しては、「普通の人間の暮らしとして考えて欲しい」と話した。
 

 

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