本日、コミュニケーションの権利を考えるメディアネットワーク」(ComRights) のメンバーが放送法改正案に対する声明を発表し、衆議院総務委員会委員へ送りました。
放送法改正案の廃案を求めます
私たちは「コミュニケーションの権利を考えるメディアネットワーク」(ComRights) のメンバーです。ComRights は、世界人権宣言19条などをはじめとするコミュニケーシ ョン権利に関して調査・研究を進め、放送や通信といった「場」を使って、誰もが自由に 情報を発信できる社会が実現するよう啓発活動を行っている全国的なネットワーク組織で、 市民メディア関係者やクリエイター、アーチスト、研究者などで構成されています。
今国会で上程された放送法改定案は、先の通常国会で廃案になったにも関わらず、 ほぼ同様の内容のまま提案されました。電波監理審議会の監督権限強化は削除されたものの、前政権の「放送通信法」答申を踏襲しており、60年ぶりの改正とはいいながらも、行政や業界内の都合だけで策定された国民不在の技術的な内容となっています。
先週より、放送法改正案をめぐって、与野党で修正協議は行われていると報道されています。しかし、国民に大きな影響のある「放送」をめぐる法案は、国民の前で広く議論が行われるべきだと考えます。
現在、総務省では、放送・通信において表現の自由を確保するための制度のあり方について、「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」を開催して検討しているところです。まずは、放送通信の融合時代に、日本でどのような理念で制度を策定すべきかといった理念を固めた上で、放送免許の在り方を含めた、制度改定の検討を行う問題です。理念ある放送通信政策を進めて行くためにも、放送法改正案の廃案を求めます。
以下、問題となる点を列挙します。
1、放送の免許権限について
日本は現放送法下で過去60年間、国家が放送局の免許事業を握ってきました。こうした制度は、一部の独裁的な国家で実施されているものであり、言論の自由がある民主国家では、極めて異例なことです。
実際、総務省(旧郵政省)は度々、放送局へ対して直接、行政指導を行ってきましたが、その多くは法的な根拠なく実施されてきました。しかも、1990年代以降、その数は大幅に増え、常態化しています。こうした状況に対し、総務省は、行政処分の実績がないとして正当化していますが、国家が放送局に直接指導することは、世界的に見ても極めて異常な事態です。しかも、今回の改正案では、これまでの放送法にはなかった省令委任の条項がもうけられるなど、行政の権限がますます強化される内容となっており、大きな問題です。
更に、改正案ではハードとソフトの分離が行われ、原則として、それぞれに免許を受けるようになります。ハードとソフトが分離する中で、政府が番組内容に関連して業務停止を命じることが可能 となれば、放送事業者は委縮してしまいかねません。ハード/ソフト分離に関しては、様々な意見がありますが、もし分離する必要があるならば、同時に、免許規制機関の独立性を確保することが必要だと考えます。
2、放送の定義について
改定案では、放送の定義が「公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信 の送信をいう」と改められています。この改定によって、放送とは、地上波・衛星波のテレビ・ラジオ及びケーブルテレビを含むものとなったとされています。しかし、表現の解釈や技術の進歩によっては、インターネットの動画サイトやブログな ども「放送」に含まれかねません。そのような事態となった場合には、インターネットが 直接、政府によって規制され、業務停止などにされる恐れが現実のものとなります。改正案では、「一般放送」を総務省令で定めることとなっていますが、将来、そのような 問題が生じないよう、「放送」の定義をより明確に法律で定義するべきです。
3、放送内容の規制について
改定案174条では、地上波のテレビ・ラジオを除く放送事業者に対し、総務大臣が 業務停止を命令できる権限が付与されています。また、地上波のテレビ・ラジオに関しては、電波法76条で、業務停止を定めています。ハードとソフトが分離する中で、政府が番組内容に関連して業務停止を命じることが可能となれば、放送事業者は委縮してしまいかねません。こうした問題を放置したままの改正は、許されるべきではないと考えます。
4、公共放送について
新聞報道によると、NHKの福地茂雄会長が、11月4日の定例記者会見で、放送番組のインターネットを使った同時配信について意欲を示したといいます。福地会長はすでに総務大臣に対し、放送法の改正について要請しており、2012年までに受信料制度を含め、見直しを検討している報じられています。
総務省側は、私たちの問合せに対し、改正放送法が成立後、当面の改正はあり得ないと回答していますが、いずれ、総務省とNHKとのなし崩し的な合意によって、ネットの同時配信及びネット視聴者への受信料負担制度が導入される可能性は否定できません。
放送と通信の融合が進む中、公共放送の将来的なビジョンや受信料の位置づけ、NHKの法人の扱いやネット配信と放送との関係などについて、今こそ、国民を交えた丁寧な議論が必要です。本質的な議論を欠いたままの本改正案は無意味であると考えます。
5、表現の享有基準とクロスメディア規制について
電波法では第7条に定められている「自由享有基準(マスメディア集中排除の原則)」は、なるべく多くの多様な人びとが放送に関わることで、言論の自由を確保しようという民主主義社会の理念を謳ったものです。これまで、この条文を根拠に省令が定められ、少数の事業者が複数の放送事業者を支配することを防ぐために、出資を制限してきました。
しかし、本放送法改正案では、在京キー局の地方局への出資上限を現在の「20%未満」から「3分の1未満」に緩和するなど、昨年4月1日に施行された放送法改正に続き、放送局の寡占化を促す政策が続けられています。しかも、「クロスメディア規制を3年以内に検討する」とした付則も削除され、マスメディア集中排除の原則は、今や風前の灯火とも言えます。こうした既存の事業者優先の政策を改め、メディアの多様性を確保するための政策にシフトする必要があると考えます。
また、こうした政策を進めて行くためには、総務大臣が業務停止命令を出せる現状を改める必要があることは、言うまでもないことです。
6、市民のアクセス権について
放送・通信を通して一般の市民が様々な情報を取得し発信している現状において、市民のアクセス権をいかに確保するかが極めて重要となっています。しかし、日本の放送体系は長年、放送事業者を規制する視点からのみ検討されており、今回も国際競争やビジネ ス的な視点のみからの改定となっています。メディアの多様性や市民のアクセス権の観 点から見ると、むしろ時代に逆行した内容と言わざると得ません。
国民権利保障フォーラムを含め、市民に開かれた議論を十分に尽くし、 海外での融合法制をきちんと検証した上で、人々へのメディアアクセスや発信などを促す 非営利メディアを法的に位置づけるなど、コミュニケーションの権利を十分に考慮した法 制度を確立するよう強く要請します。また、放送・通信は市民生活に非常に密接に関連し ています。大幅な法律の改定や立法を行う際は、十分に情報を公開した上で、一般市民が理解できるような手続きを経る必要があると考えます。
2010年11月17日
ComRights有志
岩崎 貞明 「放送レポート」編集長
ガブリエレ・ハード 関西学院大学社会学部助教・情報メディア政策担当
元学術振興会外国人特別研究員・東京大学情報学環濱田純一研究室
川島隆 滋賀大学経済学部特任講師
白石草 OurPlanetTV 代表理事・一橋大学大学院地球社会研究所客員准教授
早稲田大学政治学研究所ジャーナリズムコース講師
鈴木亮 環境NGOA seed Japan メディアCSRプロジェクト
関房江 デモクラシーナウ!ジャパン事務局
津田正夫 立命館大学特任教授
日隅一雄 News for People of Japan 編集長・弁護士・日本弁護士連合会人権擁護委員会
日比野純一 株式会社エフエムわいわい代表取締役
世界コミュニティラジオ放送連盟(AMARC)日本協議会代表
深尾 昌峰 きょうとNPOセンター常務理事 京都コミュニティ放送副理事長
松浦さと子 龍谷大学経済学部准教授
松浦敏尚 特定非営利活動法人市民メディアセンターMediR
松浦哲郎 龍谷大学社会学部コミュニティマネジメント学科講師
世界コミュニティ放送連盟アジア太平洋地域理事
安田幸弘 レイバーネット日本
声明を送付した総務委員会委員の皆様
(お名前/電話/ファックス/メール送付先/ホームページ/ツイッターアカウント)
委員長 原口一博 民主 03-3508-7238 03-3508-3238
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理事 稲見哲男 民主 03-3508-7623 03-3508-3253
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理事 小川淳也 民主 03-3508-7621 03-3508-3251
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理事 黄川田徹 民主 03-3508-7520 03-5251-3683 http://www.kikawada.com/mailform.html http://www.kikawada.com/
理事 階猛 民主 03-3508-7024 03-3508-3824
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理事 福田昭夫 民主 03-3508-7289 03-3508-3739
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理事 大野功統 自民 03-3508-7132 03-3502-5870
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理事 坂本哲志 自民 03-3508-7034 03-3508-3834 http://www.tetusi.com/mailform1/ http://www.tetusi.com/
理事 西博義 公明 03-3508-7389 03-3508-3509
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委員 石井章 民主 03-3508-7436 03-3508-3916
委員 石田芳弘 民主 03-3508-7423 03-3508-3903
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委員 内山晃 民主 03-3508-7467 03-3508-3297
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委員 大谷啓 民主 03-3508-7031 03-3508-3831
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委員 大西孝典 民主 03-3508-7219 03-3508-3219
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委員 奥野総一郎 民主 03-3508-7256 03-3508-3526
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委員 小室寿明 民主 03-3508-7450 03-3508-3970
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委員 後藤祐一 民主 03-3508-7092 03-3508-3962
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委員 藤田憲彦 民主 03-3508-7405 03-3508-3885
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委員 松崎公昭 民主 03-3508-7239 03-3508-3239
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委員 山岡達丸 民主 03-3508-7051 03-3508-3851
委員 和嶋未希 民主 03-3508-7206 03-3508-3206 http://www.wajimamiki.com/postmail/mail.html http://www.wajimamiki.com/
委員 渡辺周 民主 03-3508-7077 03-3508-3767
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委員 赤澤亮正 自民 03-3508-7490 03-3508-3370
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委員 石田真敏 自民03-3508-7072 03-3581-6992
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委員 加藤紘一 自民 03-3508-7461 03-3508-4111
webmaster@katokoichi.org http://www.katokoichi.org/
委員 川崎二郎 自民 03-3508-7152 03-3502-5173
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委員 佐藤勉 自民 03-3508-7408 03-3597-2740
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委員 橘慶一郎 自民 03-3508-7227 03-3508-3227
office@t-k1.net http://www.t-k1.net/
委員 谷公一 自民 03-3508-7010 03-3502-5048
opinion@tanikouichi.jp http://www.tanikouichi.jp/
委員 森山裕 自民 03-3581-7164 03-3508-3714
g08204@shugiin.go.jp http://www.moriyama-hiroshi.jp/
委員 稲津久 公明 03-3508-7089 03-3508-3869 https://www.komei.or.jp/contact/ http://www.inatsu.com/
委員 塩川鉄也 共産 03-3508-7507 03-3508-3937
http://www.shiokawa-tetsuya.jp/iken/iken.htm http://www.shiokawa-tetsuya.jp/
委員 重野安正 社民 03-3508-3419 03-3508-3419 shigeno.oita2ku@ia9.itkeeper.ne.jp http://www.e-oita.jp/shigeno/
委員 柿澤未途 みんな 03-3508-7427 03-3508-8807 http://www.310kakizawa.jp/form/opinion/opinion.html
http://www.310kakizawa.jp/
(電話とFAXはH22年の国会議員要覧で確認しています。またメールアドレスは各議員のホームページにて公開されているアドレスです。誤りを見つけた方はお知らせください)