2010/08/03 - 13:42

ようこそ、アムステルダム国立美術館へ

 フェルメールの「牛乳を注ぐ女」―。2007年に、東京・六本木の国立新美術館が開館した際、この作品が目玉だったことを覚えているだろうか。開館記念の「アムステルダム国立美術館所蔵・フェルメールの「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展」は大盛況で、「牛乳を注ぐ女」の前には、信じられないほどの長蛇の列が出来ていた。
 
 この有名な絵画が、日本のみならず、今、世界中の美術館に貸し出されている。理由は、アムステルダム美術館が長期間、閉鎖されているからだ。なぜ閉鎖に追い込まれているのか。この背景を描いたのがドキュメンタリー映画「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」である。
 
 アムステルダム美術館は、芸術大国オランダの人気観光スポットの一つである。フェルメールの絵画だけでなく、レンブラントなど、誰もが知る著名な絵画が展示されている。
 
 その美術館が2004年に大規模な改築工事を計画。「市民に愛される美術館」を理想に掲げた大規模なプロジェクトだったが、美術館の内部に、町の南北を結ぶ通路があったことから、自転車でこの通路を通過するサイクリストなどが改築プランに猛反発。改修計画は二転三転することとなる。
 
 監督は、もともと美術館側の依頼によって、改築工事の経過を描く予定だったがこの事態に、急遽計画を変更。美術館をめぐる騒動そのものを取材することになったという。4年以上の月日をかけ、個性的な館長や、設計変更に肩を落とす建築家、展示コンセプトを練る学芸員、美術館の見回りをしている警備員、修復師などなど、普段はあまり目にすることのない、美術館関係者の素顔を生き生きと描いている。
 
 驚くのは、日本とまったく異なるオランダ市民の合意形成の方法だ。市民の意見によって、こんなに簡単に大規模な計画が変更するのか!と驚くばかり。2008年夏の公開予定の計画だったにも関わらす、今でも工事がストップしているのだから。
 
 作品自体はやや美術館寄りの内容に思えるが、美術館とは何なのか、民主主義とは何なのか、公共性とは何なのか、様々なことを考えるきっかけにもなる作品だ。

監督 ウケ・ホーケンダイク(2008年/オランダ/117分)

公式ページ
http://www.ams-museum.com/

8月21日(土)渋谷・ユーロスペースにてロードショーほか全国順次公開

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