国内約80のNPO支援団体ほか民間助成団体や趣旨に賛同する個人が参加するNPO法人会計基準協議会は昨年3月、NPO法人会計基準策定プロジェクトを開始した。
NPO法が施行されて12年。法人登録は約4万となり、活動に参加する人も増え、「新しい公共」を掲げる現政権はNPO活動のさらなる発展に期待を寄せている。しかし、会計基準がないことで、寄付をしたい人や助成団体にとっては、会計書類の表記方法がばらばらで比較ができない、資金の使途が分かりにくいという課題があった。また、会計士や税理士などが支援しにくく、経営判断が正確にできないことから社会的な評価にも結びつけにくかったという。そこで、NPO(非営利活動)の取り組みや成果を数値化する会計基準を作り、解決をめざしている。
昨秋以降、全国17か所で実施したキャラバンには約800人が参加し、届いたパブリックコメントは約500件。これらを通じてまとまった最終案が4月8日、東京・文京区民センターで報告され、会場には100人以上のNPO関係者らが集まった。
「NPO会計基準は、NPOの哲学に沿ったものを目指しており、法で義務化するのはおかしいから、みんなで作ってみんなで使うものにしたい」と同策定委員長の江田寛氏(公認会計士)。同会計基準の基本的な考え方は、「市民の期待と、それに応えるべきNPO法人の責任の、双方にふさわしい会計基準とはいかなるものであるか」が出発点。会計報告の作成者ではなく利用者の視点を重視して、市民にとって分かりやすく、社会の信頼にこたえる会計報告をめざしたという。
ボランティア活動を可視化する基準がほしい、という声に応えて、本文に「財務諸表の注記」を設け、ボランティアなども財務諸表に計上する。財務諸表は「収支報告書と財産目録」から「活動計算書と貸借対照表」という形式に移行するが、小規模のNPOにも使いこなせるよう実務担当者向けの「ガイドライン」を作成するという。これにより、複式簿記の理解も深めたいとの目的があるようだ。財産目録は付属書類という位置づけだというが、財産が現金と預金のみ、というNPOが大半だという現状を反映している。
また、年度をまたいだ事業の処理も規定し、助成金や補助金などの決算期とのずれにも対応している点も、管理会計に不慣れな体制が多いNPOには朗報といえそうだ。
同協議会では、現在もパブリックコメントを募集している。これまでの議事や配布資料はウェブで公開しており、これまでの議論に参加していなくても、意見を出しやすい環境を整えている。
http://npokaikei.blog63.fc2.com/
参加者との意見交換の場面で、同協議会の加藤俊也事務局長(公認会計士)は、「公益的なサービスの実施がNPOの目的だとしたら、ボランティア活動に関する労賃も計上したほうがよいだろう(現金は発生しない)。
手間暇かかるが、それによって活動の規模が正しく表せると考えられる団体は、それを導入したらいいと思う」と述べた。これに関連して、同協議会策定委員の大久保朝江氏(杜の伝言板ゆるる代表理事)は、「活動を数値化することは、安い労働力として委託事業が降ってくるような状況への対策にも有効では」と加えた。
同協議会によると、市民に活動の価値への理解を深めるための書類の一つであり、公官庁の求める様式に沿った書類作成とは別の意味合いのもの。そのため、所轄庁や税務署などに提出する書類に変更が生じるものではないという。また、これら会計基準に準拠した会計ソフトも検討しており、社会全体からNPOへの寄付を増やして活動をより充実させるために、みんなで「NPO法人向会計基準」に参加することを目標にしていきたい、と述べている。
写真はすべてNPO法人会計基準協議会提供。
【取材・文 池田佳代】
参加者は「青系」「赤系」の色紙で意思を示した
全国キャラバンと同様に意見交換に臨む策定委員