1991年に米軍基地のなくなったフィリピン。基地のあった街で、今も深い傷とともに生きる“ナナイ”(お母さん)たち。
「何でもやるからここにいろ」若い頃ダンサーだったジャリタさんは、米兵にレイプされた挙句、この言葉を浴びせられ軟禁された過去を持つ。その米兵は任期が終わりあっけなく帰国。彼との間に生まれた子どもは養子に出し、二人目の子どもの父親からは度重なる暴力を受けた。
複数の米兵との間に6人の子どもを持ったミラグロスさん。子どもたちを平等に愛することができず、虐待を繰り返し、子どもたちの多くが家出した。癌に侵され入院した彼女を看病する子どもは、ひとりもいなかった。
息子のひとりは言う。「僕はいつも虐げられてきた。本当の母親じゃないみたいだ。」
暴力と絶望の溢れる戦場を経験した兵士たちの心は、暴力と絶望に溢れている。そうして溜まった負の連鎖は、最終的には弱い立場へ押し寄せる。
それでも、“ナナイ”たちは、涙を流しながらそれぞれの置かれた状況の中で、必死に生きている。しかし、屈辱を受け、虐げられてきた心の傷は永遠に癒えることはない。
基地が残したたくさんの悲劇は、米軍基地を抱える日本の私たちにも決して他人事ではない。
監督:中井信介(2009年/日本/100分)
第1回 座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル入賞作品
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中井信介監督HP
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シネマ・ジャック&ベティにて上映決定!
8月28日~9月5日にシネマ・ジャック&ベティにて開催されるよこはま若葉町多文化映画祭にて上映されます。「クアリ Quarry~米軍に依存し傷ついた人々~」も同時上映。