福島県郡山市の小中学校に通う子ども14人が、郡山市に対し、安全な地域に学校ごと集団疎開するよう求める裁判で、7月6日、第1回の審理が行われた。子どもの被ばくについて争う前例のない裁判であることから、審理に入る前に棄却される可能性もあったものの、実質的な審理が行われる見通しとなった。
この裁判は、年間1ミリシーベルト以上の環境で教育を受けている子どもたちが、1ミリシーベルト以下の安全な場所での教育を求めて、6月24日に、申し立てが行われたもの。
子どもの被曝放射線基準をめぐっては、文部科学省が4月、校庭の利用制限基準を年20ミリシーベルトと通知したが、保護者らの反発を受け5月末に、国際放射線防護委員会(ICRP)が一般人の線量限度として定めている年間1ミリシーベルト以下に抑える目標を示している。しかし、文科省などのモニタリングデータを試算すると、14人が通う小中学校7校の放射線の空間線量は、爆発事故があった3月12日からの5月25日までの75日間だけの積算で既に3.80~6.67ミリシーベルトに達するという。このため、外部被曝だけで1ミリを大幅に超えており、被ばくによる健康被害の恐れがあるとしている。
主任弁護士を務める柳原敏夫弁護士は、裁判後の記者会見で「門前払いの可能性もあったが、裁判所は非常に誠意のある態度だと感じた。集団疎開の問題を真剣に受け止め、議論してくれているのではないか。手応えを感じた」と述べた。また、裁判官が、「もし集団疎開が行われた場合の、期間の見通しをどう考えているか」といった踏込んだ発言があったことを披露。今後の郡山市の対応が焦点となる見通しを示した。
次回は7月19日の予定。