1997年、東京・渋谷区で東京電力の女性社員が殺害された事件で、強盗殺人罪で無期懲役が確定していたゴビンダ・プラサド・マイナリさん(ネパール国籍)の再審請求審で、東京高等裁判所は7日、再審開始と刑の執行停止を決定した。
この事件について、ゴビンダさんは一貫して殺害を否認し、無実を訴えてきた。2000年の一審判決は無罪としたが、同年12月の二審・東京高裁判決は「受刑者以外が殺害現場となった部屋に入ったとは考えられない」などと述べて有罪と判断し、無期懲役の判決。2003年に最高裁が上告を棄却し確定したことに対し、ゴビンダさんは、2005年3月に東京高裁に再審を請求していた。
再審請求で去年実施されたDNA型鑑定では、被害者の体内に残っていた精液と殺害現場のアパート室内にあった体毛の型が一致。ゴビンダさんとは異なる男性のDNAだったため、別の犯人の可能性が浮上した。
今日の裁判所の判断について、長年、ゴビンダさんの無実を信じて活動してきた「無実のゴビンダさんを支える会」は、記者会見で、「現在、来日している家族が帰国される時には、ゴビンダさんも故郷のネパールに戻ることが出来るように日本の司法の名誉にかけて、検察は横浜刑務所から釈放してください」と訴えた。
また、日本弁護士連合会の山岸憲司会長は、「検察官は、裁判所からの要求がなされるまでは、弁護団の証拠開示請求に対して拒絶する対応に終始していたが、ようやく検察官から開示された証拠の中にはゴビンダ氏以外の第三者の関与を強く推認させる証拠が存在するなど、検察官による証拠の不開示が冤罪を生み出した原因であることが明らかになった。このような検察官の対応は誠に遺憾である」と声明を出した。
ゴビンダ元被告と面会をした弁護士によると、ゴビンダ元被告は、「一日も早くネパールに帰って病気のお母さんに会いたい。ここにいる理由はない。15年間の時間は、もう戻りません。検察官には、もうこれ以上、戻らない時間を増やさないで欲しい」と現在の心境を語ったという。
検察側は釈放について異議申し立てを行ったものの、高裁が申し立てを退ける決定をしたことから、釈放に向けて手続きを開始。ゴビンダさんは7日中に、横浜の入国管理局の施設に身柄を移される見込みだ。
東電OL殺人事件 10年目の現場検証(C)無実のゴビンダさんを支える会
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