「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会(家族の会)」(東京都江東区)は13日、住宅のアスベスト被害に関する初の電話相談を開始した。同会が報道機関を共同で実施した調査により、全国の公営住宅約2万2千戸で、発がん性の高いアスベスト(石綿)が使われていたことを受けたもの。無料の電話相談は、明日14日まで行っている。
子ども部屋の2段ベッドでアスベスト暴露
今回、全国の公営住宅を対象に調査に着手したのは、神奈川県横浜市の斎藤和子さん(54)が、2015年に突然、胸膜中皮腫と診断されたことがきっかけ。中皮腫は、多くの場合、アスベスト曝露が原因とされており、曝露から発病までに、30~40年程度かかるといわれる。
では一体、どこで暴露したのか。「家族の会」が調べたところ、斎藤さんが1歳から結婚した23歳まで過ごした横浜市の県営千丸台団地(横浜市保土ヶ谷区)の子ども部屋で暴露した可能性が高いことがわかった。女性が住んでいた千丸台団地の住宅では、89年に封じ込め工事が行われたものの、それ以前は、3つの居室と台所、浴室、便所すべての天井に吹き付けアスベストがそのままむき出しとなっていた。
女性が最も長く時間を過ごしていた子ども部屋の天井にもアスベストがあり、2段ベッドが置かれていたため、このベッドの上から天井を触ることもあったという。現在、この住宅には女性の母親が住んでいるが、封じ込められているアスベストを採取して検査したところ、より発がん性の高い青石綿(クロシドライト)も含まれており、推定含有率は50%を占めていた。
(二段ベッドのすぐ上の天井のアスベストがむき出しになっていた)
同様の公営住宅は全国に2万2000戸
現在は、すでに封じ込めの工事が実施されていたも、それ以前の暴露により、中皮腫や肺がんにつながる恐れがある。子ども部屋での暴露が、女性の発がんにつながった可能性が高いとみた家族の会は2月、ほかの建物でも同様のアスベスト被害が生じる恐れがあるとして、アスベストを使用している公営住宅の調査に着手。都道府県や都市再生機構(UR)などに電話や情報開示請求をして、アスベストを使用していた団地名を特定した。
その結果、32都道府県の公営住宅約8700戸と都営とUR約1万3500戸で、吹きつけアスベストが使われていることが初めて判明した。大半の住宅は対策が終了しているものの、対策工事の前に居住していた住人が、アスベストに暴露している恐れがある。
斎藤さんの暴露状況などの調査にあたった「家族の会」の鈴木江郎さんは、「アスベストが原因で発症する「中皮腫は」が2015年に始めて年間1500人を超える死亡者が出た。建物の吹き付けアスベスト被害はまだまだ埋もれている。被害を受けた人の、掘り起こしの必要がある」とホットラインを開設した背景を説明。また、今回、公表された調査結果も、全体の一部に過ぎないとし「行政が責任をもって調査する必要がある」と指摘した。
夫を中皮腫で亡くした同会の小菅千恵子副会長は、「住んでいた建物に吹き付けがあって、アスベストの病気である中皮腫や肺がんなどの病気になった人はぜひ相談してほしい」と訴えた。「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会(家族の会)」は、6月13(火)、14日(水)午前9時~午後5時、電話:0120ー117ー554で被害に関する無料相談を受け付けている。
アスベストが使用されていた全国の公営団地一覧
https://sites.google.com/site/tatemonosekimen/