2020年東京五輪・パラリンピックの招致をめぐり、フランス当局が日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長が汚職に関わった疑いがあるとして捜査を開始したことを受け、竹田会長は15日、記者会見を開いた。これまで同様、汚職への関与を否定したが、会見をわずか7分間で打ち切り、メディアからの質問は受け付なかった。
竹田会長は会見でシンガポールのコンサルタント会社「ブラック・タイディング社」への契約は通常の手続きに従ったにすぎないと説明。「支払ったのはコンサルタント料だった」と、汚職への関与を改めて否定した上で、「フランス当局の捜査に協力することで、潔白を証明したい」と述べた。
2億3000万円は正当な対価
五輪招致をめぐっては、東京五輪パラリンピック招致委員会が13年7月と10月の2度にわたって、「ブラック・タイディング社」に支払った180万ユーロ(約2億3千万円)が贈賄に使われた疑いが持たれている。竹田会長はこれについて、「ブラック・タイディング社への支払いは、コンサルタント業務に対する適切な対価であった」と主張。さらに「ブラック・タイディング社と国際競技連盟会長及びその息子がいかなる関係があったことも知らなかった」と釈明した。
「ブラック・タイディングス社」代表であるイアン・タン・トン・ハン氏は、IOC委員のラミン・ディアク氏の息子であるパパ・マッサタ・ディアク氏の親友。ラミン氏は国際オリンピック委員会(IOC)委員を兼任しており「アフリカ票」の取りまとめ役とされており、五輪に関わる疑惑で国際指名手配されている。
ブラック・タイディングス社については、フランスの捜査が始まった2016年5月、当時の馳浩文部科学相が「電通に勧められて招致委員会が契約を判断した」と説明。竹田会長も、同社のコンサルタントであるイアン・タン・トン・ハン氏から売り込みがあり「電通に実績を確認した」と発言しているが、これについても、「私自身はブラック・タイディング社との契約に関し、いかなる意思決定プロセスにも関与しておりません。」と強調した。
会見はわずか6分40秒
会見は書面を読み上げただけで、わずか6分40秒で終了。フランス当局の捜査中を理由としたが、突然の打ち切りに「なぜ答えないのか」「7分のためにこれだけのメディアを集めるとはおかしい」「いつ決まったのか」など、メディアからは批判の声が上がった。
またフランスのプレスと見られる記者から「竹田さんは起訴されていないと言っているが、フランスの司法制度では起訴に近い」「8割は起訴される」との質問に対して、広報責任者は「起訴された事実はありません。」の一点張り。他にも「パリに行く予定はありますか」や「潔白を証明できる文章が開示される予定はないのか」などの質問が飛んだが、「私はお答えする立場にありません。」と繰り返した。
竹田会長の会見全文は以下の通り
改めまして、この忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。本件は招致委員会とシンガポールのコンサルティング会社、ブラック・タイディング社との間で取り交わされた、二つのコンサルタント業務に関するものであります。これら二つのコンサルタント契約は、通常の承認手続きに従い、締結されたものであります。二つの契約に関する倫理書は、通常の承認手続きを経て、最後に回覧され、私が押印いたしました。私の前には、すでに数名が押印しておりました。これらの契約内容は、ロビー活動及び、関連する情報を収集するコンサルタント業務の委託になります。これらの契約につき、私は国会の衆参両院の予算委員会をはじめとする各委員会に呼ばれ、私は招致委員会元理事長の立場で、参考人として説明をいたしました。質疑に対応するため、私は実務の詳細につき、国及び都から派遣された、招致委員会当時の職員などに実態を確認し、報告をさせていただきました。招致委員会事務局は、主として、国と都から多くの人材を派遣いただいて、オールジャパン体制で業務を行なっておりました。国会においては、その後の本件に対して、さらなる追求はありません。
さらにJOCは第三者により、外部の弁護士、公認会計士による調査チームを設置し、述べ37名の関係者を対象に、私が署名に至った経緯につき、綿密なヒアリング調査を行いました。調査報告書は、ブラッウ・タイディング社とのコンサルタント契約は、適正な承認手続きを経て、締結されたものと確認しております。承認手続きにおいて、担当者が取引の概要説明を記載した書面の倫理書を提案し、その上司が順次承認した上で理事長であった私に承認を求めるものであります。私自身はブラック・タイディング社との契約に関し、いかなる意思決定プロセスにも関与しておりません。私には、関与していた人々や本件の承認手続きを疑うべき理由はありませんでした。
調査報告書は、招致委員会からブラック・タイディング社への支払いは、コンサルタント業務に対する、適切な対価であったと結論づけております。また付け加えますと、調査報告書では私が、ブラック・タイディング社と国際競技連盟会長、及びその息子がいかなる関係があったことも知らなかったことを確認いたしました。また調査報告書は、ブラックタイディング社との契約締結に、日本法において違法性はないと結論づけました。この調査報告書は2016年9月に発表され、それ以降さらなる調査は行われておりません。2017年下旬には、フランスの要請を受けた東京地検にも協力し、すべての質問に対し解答をいたしました。東京地検では、なんらの手続きも行われておりません。その後、フランス当局の要請により、12月10日パリでヒアリングを受けて参りました。そこで全ての質疑に応答し、自らの潔白を説明いたしました。
現時点、私の心境といたしましては、この騒動により、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、着実で順調な準備に尽力されている皆様、組織委員会、オリンピック運営に対し、影響を与えかねない状況となってしまったことにつき、大変申し訳なく思っております。また、信頼するスタッフたちが一丸となって、熱い思いを持って取り組んでいたことは、紛れも無い事実であり、その支えがあったからこそ、この東京招致が実現したことを確信しております。この場をお借りして、改めて当時のスタッフを誇りに思うとともに、皆様に感謝を申し上げたいと思います。今後私は、現在調査中の本件について、フランス当局と全面的に協力することを通じて、自ら潔白を証明すべく、全力を尽くして参ります。
以上となります。(6分40秒)
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