「 健康管理のあり方専門家会議」をめぐり再度、環境省に文書を送付しました
明日12月25日に開催される「第2回東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う 住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」に関して、環境省が撮影制限を設けていることに対し、
再度、対応を求める文書を送付しました。
2013年12月24日
環境省 石原伸晃大臣殿
特定非営利活動法人OurPlanet-TV
代表理事 白石 草
冠省
貴省環境保健部放射線健康管理担当参事官室は、来る12月25日に開催の「第2回東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う 住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」の取材に関し、「カメラ撮りは会議の冒頭のみ」と限定しており、フルオープンでの撮影を認めておりません。
その理由について、桐生康生参事官は、昨年度の「放射線の健康影響に関する専門家意見交換会」において、映像が配信されたために、インターネット上に「誹謗中傷」にあたる書き込みが発生したためと説明しています。
しかし、第三者がインターネット上へ書き込みをしたとしても、それは誹謗中傷した者とされた者で争われるべき事案だと考えます。新聞協会が定めている新聞綱領にあるとおり、報道機関にとって重要なのは、報道の自由とそれに伴う責任であり、公正な報道、人権の尊重です。人権上の配慮が必要な案件であれば、当然、検討の余地がありますが、本件は該当しません。情報の受け手の行動にまでメディアの責任が及べば、どんな報道もなりたちませんし、ましてや、こうした事案によって、権力である政府から規制を受けるということはあってはなりません。
しかも、環境省が「撮影禁止」の理由としている2013年2月16日開催の「平成24年度 第1回放射線の健康影響に関する専門家意見交換会」について確認したところ、ツイッターなどの書き込み内容はどれも「誹謗」「中傷」からほど遠いものでした。講師から指摘されたからといって、これらの表現を規制し、あるいは削除を求めることは、表現規制に他なりません。また視聴者の発言とは直接関わりのない取材映像について、削除や禁止をするというのは、それ以上に深刻な問題だと考えます。
参事官室は21日、「放射線の健康影響に関する専門家意見交換会」にて、上記の事例に挙げ、取材メディアに対して書面で注意事項を示した上、同意書を取ろうとしました。現場の交渉によって、最終的には同意書なしで撮影することができましたが、かかる行為は多様な言論を封じ込める圧力となりえるものであり、見過ごすことができません。
さらに、当該会議で撮影が行われ、それによって何ら問題が発生していないにも関わらず、別の会議において、「専門家意見交換会」での事例を持ち出し、撮影を禁ずる理由もわかりません。もし環境省が、主催者としての責任回避のために、安易に撮影禁止の方針を示しているのだとしたら、それこそ大変な問題です。
東京電力福島第一原子力発電所事故以降、被曝影響や健康調査をめぐる議論は、「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ(内閣府)」、「福島県民健康管理調査検討委員会(福島県)」、「東京電力福島第一原子力発電所の事故に関連する健康管理のあり方検討チーム(原子力規制委員会)」、「原子力規制委員会「帰還に向けた安全・安心対策に関する検討チーム(原子力規制委員会)」と、これまで全て公開の場で開催されてきました。このような実績があるにも関わらず、環境省に会議が設置された途端に撮影ができなくなるというのは、一般の国民には理解しがたいことです。
とくに原発事故に伴う被曝問題をめぐっては、国民は事故直後からこれまで一貫して、厳しい目で政府を見ています。「福島県民健康管理調査検討委員会」は当初、非公開でしたが、後に公開となりました。現在は、情報の公開や透明性の確保に努力を続けている検討委員会ではありますが、過去に情報を隠蔽したことが命取りとなり、今も、県民の信頼は回復せず、基本調査票の回収率が低迷していることは周知のとおりです。
OurPlanetTVは、これらの会議の撮影を禁ずる合理的な理由はないと認め、当該会議の撮影を実施します。現場での不要な衝突を避けるためにも、他の省庁に準じた対応をお願い、委員の皆様への事前の周知をお願いいたします。
最後に、21日の「意見交換会」の撮影をめぐっては、正式に抗議文書を送付していたOurPlanetTVに対して、方針の変更に関して何ら連絡がありませんでした。一方、特定の新聞社に対しては、「撮影可能」との連絡をしていたと承知しています。このような誠意のない対応についても見直していただくよう強く求めます。
草々
環境省が12月21日にメディアに提示した同意書
http://www.ourplanet-tv.org/files/20131221.pdf