福島第一原発事故から放出した放射性物質に被曝したことが原因で甲状腺がんになったとして、事故当時、福島県内で居住していた若い男女が東京電力を訴えている裁判(子ども甲状腺がん裁判)の13回口頭弁論が3月5日、東京地方裁判所で開かれた。原告弁護団によると、口頭弁論前に開かれた進行協議で、裁判所は判決まであと3年かかるとの見通しを示したという。
冷たい小雨が降りしきる中、入廷行進が行われた甲状腺がん裁判。この日は、甲状腺がん裁判と同じ内部被ばくによる被害を受けたとして、被爆者健康手帳の交付を求めて裁判を起こし、国に全面勝訴した「黒い雨」訴訟の原告・高東征二さんが広島から駆けつけた。
被告の意見書3通の中身とは
最大の争点は「福島で多発が起きているか」
口頭弁論に先立ち開かれた進行協議で、原告が提出した争点整理(案)をめぐり、裁判所が現時点での認識を述べたことを、原告弁護団が明かした。弁護団によると、島崎邦彦裁判長は、「福島で見つかっている甲状腺がんが、他の地域を比較した場合、多発しているかどうかが一番、重要な争点」だとの認識を示したという。また仮に、多発が認められた場合、特に他の原因がない場合、そのがんは被曝によるものと推定できると述べたという。
しかし、実際には、同じ条件、同じ規模の調査は行われていないため、県民健康調査の結果やスクリーニング効果をどう評価するのかが争点となるとした上で、100ミリシーベルト論や被曝量については、こうした疫学的な争点との関連した問題として争点になりうるとの見解を示したという。
また裁判所は、今後の進行の見通しについても述べた。それによると、1年先の来年6月までに書面でのやり取りを終わらせ、同年9月に専門家の証人尋問と本人尋問を開始。尋問は1年以内に終わらせ、最終準備書面を提出して結審し、判決は約3年後になるとの見通しを示したという。

自分で読み上げたかった
この日の口頭弁論では、原告3の陳述書と準備書面を提出し、弁護士が準備書面の要旨を読み上げた。原告は期日後の会見に出席し、自身で読み上げたかったが叶わなかったと、落胆した表情で話した。