東京電力福島第一原発事故後に福島県で行われている「県民健康調査」の検討委員会が2月5日、福島市内で開かれ、健康診査と甲状腺検査について報告があった。新たに甲状腺がんの疑いがあると診断されたのは5人増え、350人となった。2019年までにがん登録を用いて把握された集計外の患者47人をあわせると、事故当時、福島県内に居住していた子どもの甲状腺がんは、術後に良性だった一人を除き、397人となった。また新たに9人が手術を受け、全員乳頭がんと確定した。
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今回の検討委員会で公表されたのは、5巡目、6巡目と節目検査(25歳と30歳)の結果。5巡目検査では、穿刺細胞診によって悪性の疑いがあると診断されたのは、1人増えて49人となった。前回の検査4回目の結果は、A判定が36人(A1が11人、A2が26人)、B判定が6人、未受診が6人で、A2判定だった人のうち、結節があった人は1人、結節と嚢胞の両方があった人が3人、嚢胞のみが22人だった。このうち、新たに手術を受けたのは4人で、手術を受けた46人全員が甲状腺がんと確定した。
また6巡目も新たに1人が悪性疑いが増え、12人となった。前回の検査結果は、A判定が6人(A1が2人、A2が4人)、B判定が3人、未受診が3人だった。A2判定だった人のうち、結節があった人は0人、結節と嚢胞の両方があった人が1人、嚢胞のみが3人だった。新たに5人が手術を受け、全員が甲状腺がんと確定した。
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25歳の節目検診は、悪性疑いと診断された人が2人増え、25人となった。前回の検査の結果は、A判定が6人(A1が1人、A2が5人)、B判定が5人、未受診が14人で、最大腫瘍径は49.9mmと5センチ近く大きくなっていた。A2判定だった人のうち、結節があった人は2人、嚢胞のみが3人だった。
30歳の節目検診は、悪性疑いと診断された人が1人増え、7人となった。前回25歳の節目検査の結果は、A判定が3人(A1が1人、A2が2人)、B判定が1人、未受診が3人でだった。A2判定だった22人は、2人とも嚢胞のみが認められていた。
資料 https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-54.html
室月委員が引き続き「検査中止」を要望
甲状腺検査評価部会の報告があったが、宮城県こども病院の室月淳委員が、2011年の検査の開始からこれまでに、10万人あたり900人もの患者が見つかっていると指摘。がん登録の統計に基けば、甲状腺がんが生涯で見つかる割合よりも多いとして、過剰に多発しているか、過剰に検出されている理由を明らかにすべきだと迫った。また、この検査によって、「過剰診断」が起き、必要のない手術が多数行われている可能性が高いなどとして、前回に引き続き、改めて、検査を中止するよう求めた。
傍聴者は一人のみ
原発事故から3月で丸14年となり、かつては多くの傍聴者が詰めかけた検討委員会も急速に関心が薄れている。5日に開かれた第54回検討委員会には、天候の影響もあるのか、傍聴者はわずか一人。報道記者が10人。撮影のビデオカメラは2台のみだった。昨年以降、テレビ局の大型カメラが取材に来ることはほぼなくなった。
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