福島県で実施されている甲状腺検査について議論する専門家会議「甲状腺検査評価部会」の第23回会合が11月15日、福島市内で開かれた。「県民健康調査」検討委員会で公表されていない「集計外」の患者が、新たに4例公表された、甲状腺がんの悪性と診断された患者が391人となった。
今回、がん登録に基づいて公表されたのは、原発事故当時18歳以下で、2019年12月までに甲状腺がん手術を受けたのは288人のデータ。検討委員会の公表には含まれていない患者が2019年の1年間で新たに4名いることがわかり、集計外の患者は、2918年までの43人と合わせると、集計外は47人(14.9%)にのぼることがわかった。2016年から19年までの3年間に限ると、把握されていない患者は31%に達する。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/658593.pdf
腫瘍径の小さな結節、悪性の割合が高値
会議の中で、帝京大学ちば総合医療センター小児科で内分泌代謝を専門とする南谷幹史委員が、腫瘍径が小さいほど、穿刺吸引細胞診の結果、悪性または悪性疑いと診断されている症例が高いことについて質問。福島県立医科大学の志村浩己教授は、県民健康調査では、穿刺吸引細胞診の適応を厳格に行っており、腫瘍径が小さな症例ほど、超音波検査所見で悪性の疑いが濃厚の患者が選定されているためではないかと述べた
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/658597.pdf
さらに今回、「カプランマイヤー法」と呼ばれる新たな解析結果を公表した。「カプランマイヤー法」は通常、生存率を見るときなどによく使用される統計解析で、今回は、いくつかの群に分けて、時間経過とともに、がんになった患者の累積数を比べた。その結果、福島医大の大平哲也教授は、線量よって、がんが増えているという有意な差はなかったと述べた。
集計外の内訳「自覚症状」と「経過観察」わからず
前回の評価部会で、委員から要望のあった「がん登録のみ(集計外)」の患者の発見経過についてもデータが公表されたが、自覚症状によってがんが見つかったのか。県民健康調査2次検査後の経過観察を経て悪性と診断されたのかは明らかにされなかった。評価部会後の会見では、がん登録で公表できるデーーたは10例以下に限られているためだとの説明があった。