東京電力福島第一原発事故後に福島県で行われている「県民健康調査」の検討委員会が2月2日、福島市内で開かれ、新たに7人が甲状腺がんの疑いがあると診断された。これまでに、悪性疑いと診断された子どもは328人となり、がん登録で把握された2018年までの集計外の患者43人をあわせると、事故当時、福島県内に居住していた18歳以下の子どもの甲状腺がんは、術後に良性だった一人を除き370人となった。
新たに公表されたのは5巡目と25歳と30歳の節目健診の結果。穿刺細胞診の結果、悪性と診断された患者は、5巡目で4人(計43人)、25歳の節目健診で1人、30歳の節目検診で2人と計7人増えた。また手術をして甲状腺がんと確定した人は5巡目で7人、25歳の節目検診で3人、30歳の節目検診で2人と計12人増え、がんと確定した患者は274人となった。
保護者「受診してほしい」67・7%、「受診して欲しくない」1・8%
会議では、福島県が実施していた甲状腺検査に関するアンケート結果についても報告があった。18歳未満の子どもの保護者と、16歳以上の検査対象者16,000人を対象に昨年8月にアンケートを送付。郵送とインターネットを通じて回答を求めたところ、全体の22・8%にあたる3,653人から回答を得た。
検査の対象になっている16歳以上の子どもに、今後の甲状腺検査を受診するつもりがあるかどうか意向を尋ねたところ、「受診するつもりがある」と回答したのは45・6%に対し、「受診するつもりがない」と回答したのは25・3%、「わからない」と回答した人は、29・1%だった。
一方、16以下の子どもを持つ保護者では、「受診して欲しい」と考えている人が67・7%と7割に達する一方、「受診してほしくない」はわずか1・8%にとどまった。「子どもの意向に任せる」と回答した人は23・7%だった。
アンケートでは、甲状腺検査の「メリット」「デメリット」に関する知識についても聞いた。その結果、受診している本人は「知っていた」人が3割に止まっているのに対し(16歳〜18歳の本人34・7%、18歳以上の本人38・1%)、保護者は5割以上が知っていた。(16歳未満の子のいる保護者55・1%、16歳〜18歳の子のいる保護者58・1%)。
「メリット」「デメリット」知った後で「受診したい」増加
さらに、甲状腺検査に関する「メリット」「デメリット」に関する説明を読む前後での意識の変化を尋ねたところ、読む前では、「受信するつもり」と答えたていた16歳以上の子どもは45・6%、「受診するつもりがない」が25・3%だったのに対し、読んだ後では、「受診したいと思った」が46・8%に増加。逆に、「受信しなくても良いと思った」が23・4%に減少した。
一方、保護者では、読む前後で、「受診して欲しい」が67・7%から54・0%に減る一方で、「子どもの意向に任せる」が23・7%から33・8%に増加。また、「わからない」も6:8%から9・6%に増加した。「受診して欲しくない」は1・8%から1・7%と横ばいだった。
アンケートは、甲状腺がん検査を受けている子どもや保護者に、検査の「メリット」や「デメリット」が適切に理解されているかを把握する目的で実施したもの。「メリット」については、「異常のないことがわかれば、安心につながる」ことや「早期発見・早期治療」などをあげている一方、「デメリット」としては「日常生活や命に影響を及ぼすことのないがんを発見する可能性がある」ことや「検査により、心配になることなど」が挙げられている。
資料:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-50.html
NHKのカメラ取材がなくなる
2011年の5月から始まった「県民健康調査」検討委員会。初代の山下俊一座長時代は、海外プレスも含め、会場は多くのカメラが並び、高い注目を集めた。しかし事故13年目を目前に控える今回は、50回目という節目でありながら、取材者はマスコミの記者が4人。フリーランスを含めても10人と、関心は大幅に低下した。1回目から撮影に入っていたNHKのカメラも今回、初めて入らなかった。傍聴者も7人だった。