小児甲状腺がん
2023/12/09 - 14:06

福島の小児甲状腺がん再発1割〜鈴木教授が学会発表

福島県立医科大学で、多くの小児甲状腺患者の手術をしてきた鈴木眞一教授が12月9日、金沢市内で開かれている第66回日本甲状腺学会で、2021年までの約10年間の子どもたちの再発数が21人・9.7%にのぼると発表した。鈴木氏が再発症例の詳細を報告したのは初めて。

今回、鈴木氏が発表したのは、2012年から2021年までに執刀した217人の症例。1回目の手術後の経過観察中に、全体の9.7%にあたる21例で再発が見つかったと発表した。観察期間は、1年から〜9年8ヶ月。小児のため、観察中の穿刺細胞診は最小限にとどめ、超音波や血液の値(サイログロブリン)などを注視しながら、なるべく子どもに負荷がかからないような診断手法をとったという。

再発部位の内訳は、対側葉の再発が7例、肺転移が4例、外側のリンパ節転移が11例で、全摘患者の再発率は12.5%、片葉切除をした患者の再発率は9.5%だった。このうち、RAI治療(放射性ヨウ素内用療法)を行ったのは16人のべ19回で、投与量は30ミリキュリー(11.1億ベクレル)が5例。100ミリキュリー(37億ベクレル)が7例。150ミリキュリー(55.5億ベクレル)が7例だった。

治療にあたっている鈴木氏はは、全体のうち、29%が1センチ以下だが、微小がんで再発した例もあり、再発例では、皮膜外浸潤を来している割合が有意に多いと指摘した。また、リンパ節転移も再発例では86%にのぼり、特に外側部のリンパ節転移が有意に多いと述べた。

小児甲状腺癌ガイドラインは来春公表へ

また鈴木氏は、日本甲状腺学会で2018年10月から着手している「小児甲状腺癌ガイドライン」も、来春公表すると述べた。甲状腺がんをめぐっては、5ミリ以下の微小乳糖がんを手術をせずに、経過観察を続ける「アクティブサーべランス」が浸透しており、日本甲状腺学会は2020年10月「成人の甲状腺超低リスク乳頭がんの非手術経過観察についての見解」を公表している。しかし、この内容には、20歳以下の小児や若年甲状腺がん例は含まれていなかった。新たなガイドラインでは「手術適応は小児と成人では異なるか?」といった診断に関してだけでなく、RAI療法の投与量やTKI(分子標的薬)の適応条件など、治療に関する内容も盛り込まれる見通しだ。

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