快晴の真っ青な空に、荒れる海ー。
8月24日午後0時半に撮影された双葉海岸の映像だ。
映像を撮影したのは、東京電力福島第一発電所から30キロ圏内に住む60代の女性だ。原発事故後に10代の孫が甲状腺がんとなり、2回にわたる手術を受けた。東京電力が、福島第一原子力発電所にたまる処理水を午後1時ごろに放出すると聞き、居ても立ってもいられず車を飛ばした。放出直前に双葉海岸にやってきた思いとはー。
流す前の大切な海を映像に残しておきたいと思って、車を走らせました。流される前に見たいと思って。見たくないけど、見たい。そんな気持ちです。流す前と、流す後。海の様子のは変化はなくても、自分の気持ちがどう変わるか。感じたかったこともあります。
私はあれほど海が好きだったのに、事故の後は、一度も海に入っていません。せっかく復興してきたというのに、また海に放射性物質を含んだ水を放出するなんて、本当に悲しい。1日460トンも流すんですよ。
それを、後の世代にどういうふうに説明すればいいのか。
決めたのは私たちの世代だから、謝らなければいけないのかなと思う。
まさか本当に流すとは。これが私の率直な気持ちです。
私はもとから、原子力は良くないとは思っていました。国にも東電にも、この間、ずっと不信感があります。被ばくしてもすぐに死なないし、だから、国は、耳障り良い説明だけしていると感じます。
事故によって、多くの人が命を失った双葉病院は今も、そのままの姿で残っています。12年間かけたのに、海洋放出とか、そんな案しか出てこないのかという思いです。やりきれない。岸田首相は月に1回くらい廃炉作業に来て欲しい。
小児甲状腺がんについても、国や東電は否定しているけど、何が起きているのか、現実をもうちょっと見ようよと言いたいです。自分は勉強しなかったから、孫を甲状腺がんにしてしまったと後悔しています。今回の海洋放出で、甲状腺がんとか、いろいろな病気を引き起こしてしまうのではないかといたたまれない気持ちです。懺悔というか。後世に残さないと。海は命の源なのに。
今日は、風が強くて、南風が舞っています。海も大荒れで、私には、海が「海洋放出」を嫌がっているように見えます。沖には船がいっぱいいて、ヘリコプターも沢山飛んでいて、震災の時を思い出し、胸が締め付けられます。
女性は「我は海の子」を歌いながら帰宅したという。「ほんと何にもできず悲しい」と肩を落としている。