舞台俳優の女性が3日、都内で会見を行い、裁判の代理人を依頼した弁護士から性的関係を迫られ、精神的苦痛を受けたとして、弁護士を相手取り、1100万円の損害賠償を求め提訴したことを明らかにした。弁護士は1日、インターネット上で自身のセクハラ行為を認め、謝罪していた。
会見を行ったのは、舞台俳優で、「演劇・映画・芸能界のセクハラ・パワハラをなくす会(なくす会)」の代表・知乃さん(25才)。知乃さんは2018年、高校時代に受けた演出家からのセクハラ被害を告発した際、馬奈木厳太郎氏に訴訟代理人を依頼していた。また、この示談金で設立した「なくす会」も、馬奈木氏が顧問弁護士をつとめていた。
訴状などによると、性的被害が激しくなってきたのは2019年9月頃から。この頃、原告女性が訴えられた別の裁判でも、馬奈木氏が訴訟代理人となったが、馬奈木氏は、女性に頻繁に観劇や食事を誘い、体を触ったり、卑猥なラインメッセージを送るなどのセクハラを繰り返すようになったという。
馬奈木氏は、身体的な接触をエスカレートさせたほか、「月60万円くらい払うよ」などと愛人契約の打診。女性は誘いを断り続けたが、馬奈木氏から「裁判も反訴とかしなくていいんじゃない?」「なくす会も僕は抜けた方がいいって話になるよ」などと迫られた2日後、性的な関係に追い込まれた。
馬奈木氏はその後、女性が性的な関係を拒否しても、関係の継続を求めて、大量にラインを送りつけるなどしたため、女性は2月に入って馬奈木氏を解任。昨年11月に、第二東京弁護士会に懲戒請求。また今月に入り、精神的な苦痛を受けたとして、1100万円の慰謝料を求める裁判を提起した。
弁護士業務と引き換えに性的強要
弁護士業務の継続と引き換えに性的関係を求められた今回のセクハラ行為について、原告代理人の佐藤倫子弁護士は、上下の力関係を背景にした「エントラップ型」のセクハラの典型例だと指摘。馬奈木氏が演劇業界で大きな力を持つビッグネームであったとことも大きな特徴だとした上で、原告が拒否できず、心理的にコントロールを受け、性行為を強要されるに至ったと述べた。
東京電力福島第1原発事故により被害を受けた住民の集団訴訟「生業裁判」の原告側代理人として知られるほか、演劇界のハラスメント撲滅のための活動に取り組んできた馬奈木弁護士。馬奈木氏は、懲戒請求の対応でも、依頼者と受任弁護士という関係にありながら性的関係を求め、関係に至った事実を認めているほか、提訴に先立つ1日、自身のブログに「私自身が既婚でありながら、相手に対して好意を抱いてしまいました」「性的関係を迫る言動を続け、相手を追い込み苦しめてしまいました」などと声明を掲載し、女性へのセクハラ行為を認め、謝罪していた。