原子力災害時の被ばく医療拠点「線量評価棟」を初視察〜規制委員長
原子力規制委員会の山中伸介委員長らは6日、被ばく医療の中核を担う量子化学技術研究開発機構(QST=千葉市)を視察した。今回の視察は、QSTが中長期目標を策定するのに先立ち、山中氏の要望で実施されたもの。2021年春に新設された高度被ばく医療線量評価棟も視察した。
高度被ばく医療線量評価棟は、原子力事故が起きた際、被ばく線量の計測などを行う拠点。施設内部全体が放射線管理区域となっており、尿などの生体試料を分析して、内部被曝について調べるバイオアッセイ施設や肺モニタといったα核種の内部被曝線量を計測する特殊なホルボディカウンタなどが設置されている。
山中委員長らが特に熱心に説明を聞いていたのは、「甲状腺モニタ」のデモ。原子力事故時に、甲状腺に集積した放射線ヨウ素を精度よく測定するために、原子力規制庁の委託事業で開発された機器だ。東京電力福島第一原子力発電所事故の際は、背景の空間線量(バックグラウンド)が高くて計測に困難が生じたり、甲状腺を精密に計測する「甲状腺モニタ」の重量が重すぎて、精度の高い計測は実施されなかった。また、従来の「甲状腺モニタ」は乳幼児を計測することを想定していなかったため、今回の開発では、多くの子どもの甲状腺を正確に計測することを目指して、開発したという。
福島原発事故、精度の高い測定できなかった〜伴委員
初めてQSTを視察した山中委員長は、「原子力災害あるいは放射線事故というのはあってはならないことだが、その事故に対応するための訓練を日々されているということを実際に現場を見て、伺うことができました。非常に感銘を受けた」と感想を述べた。
また、原子力規制委員会で、主に被ばく問題を担当している伴信彦委員は、福島原発事故時の甲状腺の被ばく線量評価が今なお、混乱をしていることに対し、「(福島原発事故では)精度と言うか、質の高い測定ができなかったことが問題」とした上で、「そういう背景があったので、放射線安全規制研究事業の最重要課題として、そのことを挙げ、より精度の高い測定ができるような測定器を作ってくださいと注文を出した」と、新たな「甲状腺モニタ」が誕生した背景を解説した。
さらに、福島原発事故で甲状腺モニタリングに関与した専門家らが、新たな「甲状腺モニタ」開発に関与したことに触れ、「彼らの問題意識としては小さな子どもに、こんな大きな検出器を当てることはできないんだということで、小さな子どもにも使えるような測定器を開発した」と評価。今後、より多くの子どもたちに迅速な計測できるよう、早期の商品化を求めた。
「小さな子どもたちの被ばくを正確に測定できる、そんな甲状腺モニターを開発したい」
緊急被ばく医療 インタビュー(矢島千秋 主任研究員)
https://www.qst.go.jp/site/qms/39513.html