東京電力福島第一原発事故当時18歳以下だった東北、関東、信越の16都県の甲状腺がん患者に、経済的な支援を行っている「3.11甲状腺がん子ども基金」が12月1日、福島県に対し、患者の声を聞くよう求める要望書を提出した。
「3.11甲状腺がん子ども基金」は2017年から活動しているNPO法人で、これまでに福島県内の甲状腺がん患者126人、福島県外の甲状腺がん患者64人に、甲状腺がんと診断された人に15万円、再発やアイソトープ治療を受けた人にさらに15万円療養費を支給してきた。
基金の理事・吉田由布子さんは、「甲状腺がん当事者は、「再発・転移」「妊娠・出産」の不安、メンタル面の不調、日々の疲れやすさから将来に向けての健康不安、治療費の心配、通院の大変さ、保険に入りにくいなど、さまざまな困難を抱えている」として、当社の要望を直接聞き取る機会を設け、支援を拡充するよう求める要望書を、県の担当者に手渡した。
今年8月、療養費を増額するとともにアンケート調査を実施し、194人の給付対象者のうち、86.6%にあたる168人が回答を寄せた。自治体や政府への要望を尋ねる項目については、「当事者と対談する機会を設けてほしい」「支援制度の検討に当事者を加えてほしい」「国も責任を認めて「手帳」を作り、健康不安への相談、対応窓口を明確にしてほしい」などの声は寄せられたという。
これに対し、県は要望書を受け取ったが、個別の団体に対して、対応はしないとしている。
集計外8人、独自に把握
アンケートでは手術の状況や再発状態などについても把握。福島県内の申請者における再手術の割合は、事故当時3−9歳の層で25%、10ー14歳で22%、15ー18歳で11%、事故当時、年齢が低いほど、再手術の割合が高いと指摘した。
福島県内申請者における再手術・RI治療の割合
事故当時年齢 | 人数 (男:女) | 再手術人数 (男:女) | RI治療人数 (男:女) | RI複数回人数 (男:女) |
3-9歳 | 24人 (14:10) | 6人(25.0%) (4:2) | 6人(25.0%) (5:1) | – |
10-14歳 | 54人 (23:31) | 12人(22.2%) (7:5) | 7人(13.0%) (4:3) | 1人(1.8%) (0:1) |
15-18歳 | 45人 (16:29) | 5人(11.1%) (3:2) | 5人(11.1%) (3:2) | 1人(2.2%) (0:1) |
合計 | 123人 (53:70) | 23人(18.7%) (13:10) | 18人(14.6%) (12:6) | 2人(1.8%) (0:2) |
福島県外申請者における再手術・RI治療の割合
事故当時年齢 | 人数 (男:女) | 再手術人数 (男:女) | RI治療人数 (男:女) | RI複数回人数 (男:女) |
3-9歳 | 14人 (3:11) | 3人(21.4%) (1:2) | 4人(30.8%) (1:8) | 2人(15.4%) (1:1) |
10-14歳 | 18人 (5:13) | 2人(11.1%) (0:2) | 9人(50.0%) (5:1) | 5人(27.8%) (5:1) |
15-18歳 | 30人 (6:24) | 4人(13.8%) (1:3) | 9人(31.0%) (5:1) | 3人(16.7%) (0:3) |
合計 | 62人 (13:49) | 9人(14.5%) (2:7) | 22人(35.5%) (9:13) | 10人(16.1%) (3:7) |
また、「県民健康調査」検討委員会で公表されていない集計外の甲状腺がん患者について、今年8月の甲状腺検査④で、2018年12月までのがん登録で把握された甲状腺がん患者が43人いることを明らかにしたが、2019年以降の集計外にいて、311甲状腺がん子ども基金が把握した人数が8人いることを発表した。
3.11甲状腺がん子ども基金2022年報告書
https://www.311kikin.org/wp-311kikin/asset/images/pdf/questionnaire2022.pdf