小児甲状腺がん
2022/07/22 - 16:53

国連科学委の対話集会、大荒れ〜誤り指摘に「結論変えず」

東京電力福島第一原発事故に伴って放出した放射線による被ばく影響に関して、昨年から今年にかけて報告書をまとめた国連科学委員会(UNSCEAR)が21日、同報告書内容を説明する市民向けの対話集会を福島県いわき市で開いた。ギリアン・ハース前議長らは「被ばく線量は少なく、がんなどの健康被害は起きない」と説明したが、国内の研究者からは「報告書には誤りがある」「被ばくを過小評価している」などと次々に疑問の声が上がり、会場は大荒れに荒れた。



7月19日から22日まで、国内で「アウトリーチ活動」と呼ばれる報告書の普及活動を展開している UNSCEAR 。この日はじめて市民向けの集会を開き、国内の研究者やメディア関係者ら30人ほどが参加した。冒頭、1時間ほど、関係者が同報告書について報告。2019年末までに公表された査読付き論文など1000以上から選んだ500本の論文を引用した科学的で客観的な報告書であることを強調したうえで、事故の影響による被ばく線量は極めて低いと指摘。福島県で多くの小児甲状腺がんが見つかっていることについては、事故の影響ではなく、「超高感度のスクリーニング検査の結果」であると結論づけた。

これに対し、会場からは厳しい質問が殺到。NPO法人3.11甲状腺がん子ども基金の代表理事で医学博士の崎山比早子さんは、日本人の食習慣などを根拠に、放射性ヨウ素の被ばく線量を半分に推計したことを問題視。福島県が実施している甲状腺検査の2次検査結果として公表されている「尿中ヨウ素」の量を見る限り、「日本人が食品から摂取しているヨウ素の量は世界平均と変わらない」と指摘。報告書の被ばくは「明らかな過小評価になっている」と反論した。

また高エネルギー加速器研究機構の名誉教授・黒川眞一さんは、報告書にはあり得ないデータが存在している批判。甲状腺吸収線量の推計シミュレーションのモデルとなっている放射性セシウムの沈着速度が、「物理的にありえない」速度になっていると指摘。厳しく批判した。

また前日の記者会見で、黒川氏らの研究者グループが誤りを指摘していることについて、「誤りは単なるタイプミス」で「結論を変えるような指摘は受けていない」と回答していたことについても激しく批判。「なぜそのようなことを言ったのか」と怒りをあらわにした。

元日本代表の明石氏。県民健康調査の委員を長く務めていたが、尿中ヨウ素のデータは知らないという。

このほか会場からは、元漁協関係者が計測した魚の線量を下方修正されたと訴えるなど、使用しているデータや内容を問題視する声が相次いだ。しかし、ハース氏らは、指摘された部分を検証するとはしながらも、結論は変わらないと繰り返した。

「科学的」とは「 公開された論文の中から拾ったもの」という意味

シノドスのインタビューで、同報告書が科学的なものであると強調していた元日本代表の明石真言氏。市民との対話で、激しい批判が繰り広げられたことについて尋ねると、こう回答した。「この報告書は公開された論文の中から拾ったもので、例外的なものとして、個人線量計データを南相馬と楢葉からもらったものあるが、ほとんどのデータはレビューをしたもの。公開された論文の中から拾っているということを言っただけで、ぼくはそれを科学的と表現しただけで、別に恣意的にどの論文を排除したとか、排除しようとかは、ぼくは言ったつもりはないです。」と回答。

また、同報告書独自の解析で、誤りが起きているとの指摘については、自身の専門外であるため、まったくわからないと強調した。

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