小児甲状腺がん
2022/07/22 - 15:37

国連科学委が福島県知事を訪問〜甲状腺がん患者「実態知って」と直訴

UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)の前議長らが20日、福島県の内堀知事を訪問し、「被ばくによる健康への影響はない」と結論づけた報告書を手渡した。これに対し、小児甲状腺がんの患者団体がUNSCEARの関係者に提言書を手渡し、正しい調査を行うよう申し入れた。

内堀知事を訪ねたのは、UNSCEARのハース前議長ら3人。 主に原発事故後の公衆の被ばく線量や健康影響をまとめた「2020年・21年報告書」を手渡し、「被ばくによる健康への影響はない」「福島の人に安心していただける」と強調した。 ハース前議長はさらに、「将来にわかって、がんの発症率が上昇する可能性はない」と被曝影響を完全に否定した。 また、福島県内で小児甲状腺がんの発症率が上昇していることについては、被曝の影響ではなく、高感度なスクリー二ング検査のを行っているためだと説明した。



一方、甲状腺がんを発症した男女6人が東電に対して損害賠償を求める裁判をしていることについては、「個々の案件にコメントするのは難しい」と回答し、「どの個人が、どの程度の線量を被曝したのかということを知る必要がある。」とと述べた。また、国内の科学者が、報告書の誤りを指摘している点について、ミハイル・バロノフ氏は「指摘はタイプミス、ミスプリントに関するもので、報告書の結論を変えるようなコメントは届いていない」と回答した。

甲状腺がん当事者らが直訴

内堀知事への表敬訪問後、甲状腺がんの患者を支援する「あじさいの会」の千葉親子さんが、UNSCEARの関係者に提言書を手渡し、UNSCEARの報告書が、小児甲状腺がん患者が増えている理由として、検査による「過剰診断」であると指摘していることについて、再発に伴う再手術をしている患者も多いと反論。患者の現状に直視するよう求めた。

甲状腺がんを患っている20代の女性は記者会見で「政治家など権力のある人が『UNSCEARが全て正しい』と言ってしまうことで、私たちががんになったことは因果関係がないということを、UNSCEARをもとに判断している状況があるので、それはちょっと苦しい気持ち。」と述べた上で、今回のアウトリーチ活動について「まだはっきりしていまい状況の中で、そのような活動をしていることは、私自身は怒りを覚えている。何もわかっていない状況で、勝手に結論づけて、国内だけでなく世界に伝えていく行動はやめて欲しい。」と訴えた。

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