東電旧経営陣4人に計13兆円賠償命令〜株主代表訴訟・東京地裁
津波対策を怠り、会社に巨額の損害を与えたとして、東京電力の株主が旧経営陣5人に対し、22兆円を会社に賠償するよう求めた裁判で、東京地方裁判所は13日、勝俣恒久元会長ら4人に計13兆3210億円の賠償を命じる判決を言い渡した。
賠償を命じられたのは、経営の事実上のトップだった勝俣元会長、清水正孝元社長のほか、原発の安全対策の責任者だった武藤栄元副社長とその上司の武黒一郎元副社長の4人。取締役としての注意義務を果たしていれば原発事故は防げたと判断した。原発事故をめぐり、旧経営陣の民事上の責任を認めた司法判断は初めてで、賠償額は国内の裁判で過去最高額とみられる。事故前年に取締役に就任した小森明生元常務に対してては賠償責任は認めなかった。
主文を読む前に、コロナ対策を理由にマスクの着用を求め、声をあげないように傍聴席に語りかけた朝倉佳秀裁判長。「7カ月かけて書いた判決です。最後までしっかり聞いてください」と語り、力を込めた張りのある声でゆっくり判決の主文を2回読み上げた。
「被告勝俣、被告清水、被告武黒および被告武藤は、東京電力に対し、連帯して、13兆3210億円およびこれに対する平成29年6月2日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え」
静まり返った法廷の中、原告の目に笑みが浮かんだ。
原発事故は「国そのものの崩壊にもつながりかねない」
朝倉裁判長は、原子力発電所はひとたび事故が起こると、「国そのものの崩壊にもつながりかねない」と指摘。原子力発電所を運転する事業者は、万が一にも過酷事故を起こしてはならない社会的、公的義務があるとした上で、旧経営陣が対策に着手せず、しかも情報を隠蔽し続けてきたとして、「原子力事業者として求められる安全意識と責任感が根本的に欠如していたと言わざるをえない」と激しく批判した。
また、政府の地震本部の「長期評価」の信頼性についても、長期評価は科学的に信頼できると認め、津波対策を先送りしたのは著しく不合理だったと指摘。水密化を含めた津波対策を講じていれば、事故は防げたと判断した。30分ほど判決文を読み上げて閉廷した東京地裁の103号法廷。裁判官らが起立して退席する際、原告席と傍聴席のどこからともなく拍手が上がり、裁判官らが退廷するまで拍手が鳴り響いた。