「区域外避難者」へ賠償指針を〜専門家ら提言
東京電力福島第一発電所事故に伴う被害や賠償問題などを研究している専門家らが8日、原発事故の国の賠償基準となっている原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)が定めた「中間指針」を見直すよう求める提言書を文部科学省に提出した。最高裁判所が今年3月、東京電力の上告を退け、7つの高等裁判所の判決が確定したことを受けたもの。7つの判決で認められた賠償額はすべて「中間指針」を上回っっているため、原賠審でも今年4月、「中間指針」を見直すかどうかの検討に入る方針を示している。
提言書を提出したのは、 公害問題に取り組む研究者らでつくる「日本環境会議」に2013年に設置された「福島原発事故賠償問題研究会」。現在の「中間指針」は事故直後に、被害の実態や全体像の把握が不十分なまま策定されたため、限界があると指摘。「「中間指針」を見直すことは、当然のことである。 」とした。
「自主的避難等対象区域」の指針が必要
見直しすべき内容として、今回、最も重視されたのは、政府が避難指示を出さなかった「避難区域外」の「避難者」と「在住者」の賠償額が極めて低く、基準が存在していない点だ。国は、福島県の一部の地域などを「自主的避難等対象区域」と位置づけ、中間指針第一次追補、第二次追補で、子どもや妊婦に40万円、それ以外は8万円を支払うことを決定した。
提言書では、2017年3月で無償住宅の提供が打ち切られるなど、「区域外避難」の避難生活の実態は極めて過酷であると指摘。また「滞在者」は、「回復しない地域の生活基盤の中で、平穏な日常生活が疎外され、放射線被ばくへの不安の中で暮らしていくという被害が継続している。」などとして、これらの損害をどう評価するか改めて検討されるべきだとした。
また、対象地域についても、福島県が「上乗せ給付」を決定した会津地方や県南地域、「生業訴訟」判決が賠償の対象とした、宮城県・茨城県・栃木県の一部地域などについては、少なくとも賠償範囲を拡大すべきであるとした。 このほか、避難指示区域における「ふるさと喪失慰謝料」の創設や、旧緊急時避難準備区域などの期間の見直しなどにも触れている。