国に原発事故の責任はあるのかー。
2011年3月の東京電力福島第1原発事故に伴い、福島県から千葉県に避難した住民らが国と東電に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁は15日、住民と国の双方から意見を聞く弁論を開いた。原発事故に伴う同種の集団訴訟は全国で30件ほど起こされているが、「国の責任」をめぐり、最高裁で弁論が開かれたのは初めて。
弁論で、住民側は「国は規制権限を行使しなかった」と主張。国側は「津波の予見は不可能だった」などと反論した。原告で、浪江町の津島地区から千葉県に避難した小丸哲也さん(92歳)は陳述で、原発事故直後、放射能の危険性を知らず3月14日まで避難しなかったことや、故郷を失った無念さを述べた。
弁論後の会見で、小丸さんは「無念の気持ちを裁判官に伝えたかった」と述べ、「裁判官には伝わったはずだ」と声を強めた。また代理人の滝沢信弁護士は「最高裁所が国の責任を認め、国が加害者本人なんだという司法判断を下すことに意義がある」「全国の原発被害者に希望の光を与える裁判になると確信している」と期待を込めた。
原発事故をめぐり、国に損害賠償を求めた訴訟は、これまでに千葉、群馬、福島(生業)、愛媛の4つの訴訟で高裁判決が出ているが、「国の責任」をめぐり判断が分かれている。千葉訴訟を皮切りに弁論を開き、最高裁が近く判断を下す見通しだ。