東日本大震災
2022/04/15 - 12:20

東日本大震災より激しく揺れた~度重なる災害にあえぐ福島県・浜通り

先月3月16日午後11時36分ごろ、宮城県や福島県で震度6強を観測する地震が発生した。 東北新幹線が脱線するなど大きな被害を出したが、4月14日には、運転見合わせとなっていた区間も全線再開となり、ウクライナ情勢などの陰に隠れて、被害が報道されることはほとんどなくなった。だが、福島県の相馬市や南相馬市の鹿島区では、東日本大震災より揺れが大きかったという。たびたび地震や台風などの災害に見舞われてきたこの地域では、再建の見通しが立たない施設が少なくない。

700年続く神社の鳥居は取り壊しに

鎌倉時代から室町時代にかけて、後醍醐天皇が治めた建武年間(1334-1336)に創立された相馬市内の涼ヶ岡八幡神社。本社などが国の重要文化財に指定されている。3月17日に起きた地震で、境内の灯篭はほとんどが倒壊した。

「揺れた揺れた。すごかったね。ドーンといって、ユサユサだから、今までの地震とは違う被害だったですね」そう話すのは、禰宜の遠藤正弘さん。1930年代に建てた鳥居は大きく傾き、撤去せざるを得ないという。ただ、その撤去費用だけで60~80万円。再建には700万~800万円ほどかかるという。境内には倒壊したものも多く、すべてを再建するには、膨大な費用が掛かる。どのように資金を調達するか。頭を悩ませている。

ポンプと配管が破損~流水を使えなくなった相馬双葉漁協

敷地内に大きな亀裂が走る福島県相馬市の相馬原釜魚市場荷さばき施設。東日本大震災で全壊し、2016年に再建された新しい建物だが、地震の強い揺れで地盤沈下による大きな段差が発生。海水浄化施設のポンプや配管が損傷し、流水が使えない状態で漁業を再開している。

水揚げしたばかりの魚の鮮度を保ちながら出荷するには、大量の流水が欠かせない。仮設のくみ上げ用ホースで大きな水槽を作り、そこからバケツを使って、魚を洗う市場関係者たち。スミを出すタコは、きれいに洗い流す必要があるが、これも全てバケツの水で行っている。

東京電力福島第一発電所事故前には、18,615トンあった相馬双葉漁業協同組合の水揚げ量は、「試験操業」により、徐々に水揚げ量を増やし、2000年の段階で3,883トン(事故前の20%)だった。昨春からは「拡大操業」に切り替わったが、その矢先の大きな被害。施設が直る見通しは立たず、早くとも夏までは、この状態が続くという。暑い夏の季節、流水なしでどう鮮度を保つか。これから厳しい季節を迎える。

松川浦の旅館24軒すべてが休業に~廃業を決める旅館も

相馬双葉漁協に隣接する松川浦でも、悲鳴が聞かれた。24軒ある旅館の建物が全て大きな被害を受け、休業している。東日本大震災時でも大きな被害を受けた松川浦。再開までに1年近くがかかったという。だが、地元の復興事業に伴う作業員などが宿泊し、観光業が厳しい中でも、旅館の経営は堅調だった。

しかし、福島県相馬市では2019年10月に、台風19号に伴う大雨で宇多川が決壊するなど市内数カ所で水があふれ、多くの住宅が濁流にのまれ断水に。昨年2021年には2月、3月と大きな地震が発生。2月13日・福島県沖を震源とするマグニチュード7.3の地震では、相馬市で震度6強を記録し、建物に亀裂が走るなどの被害が出た。

「11年間に4度にわたる大規模な災害に見舞われ、もう資金が回らない。」そう強調するのは、相馬市松川浦旅館観光組合の菅野正三さん。「3.11の状況から11年。それなりに一生懸命がんばりながら、支払いもしながらやってきた。去年の地震でも「直せばなんとかなる」とやってきたのですが、また今年となると、もう資金がないわけですよ。」

コロナで売り上げが下がる中、再開することが可能なのか。国や自治体による、特別な手当てがなければ、多くの旅館が廃業せざるを得ないという。一方で、国の補助金を受けているために、簡単に廃業を選択できない現実もあり、八方ふさがりな状況だ。「旅館業は規模が大きい。再建なんて、簡単に口に出せないほどの金額がかかるので、組合24軒あるが、前向きになれない。」そうこぼす。

借金が重なり、進む道が見えない人気旅館

リニューアルした直後の風呂に大きな被害を受けた「旅館 斎春(さいはる)商店」。「今までの地震で一番ひどかった」そう口にするのは、若旦那の齋藤智英さん。昨年の地震を受け、館内を大幅に修復した直後に地震に見舞われた。建物は、完全に傾き、建て替えざるを得ないほどの被害を受けた。

すでに多額を抱える中での、新たな被害に、家族は頭を抱えている。 斎春 は、地元の新鮮な海の幸を提供する店としてファンも多い。しかし、自慢の大型冷蔵庫も損壊し、鮮魚用の魚を泳がせていた水槽を保管する倉庫は、開かなくなった。この先、経営が続けられるのか、見通しは立たない。

「福島に思いを寄せてほしい」~大土雅宏さん

東日本大震災直後、物資の枯渇していた南相馬市で、全国から支援物資を集めて支給するボランティア活動をはじめ、NPO法人BOND&JUSTICを立ち上げた大土雅宏さん。地震が起きた時は、防災イベントに参加するため京都にいたが、すぐに地元入りした。

3.11を超える深刻な被害。それを目の当たりにして一日寝込んだという。駆け付けたのが、松川浦の先輩の経営する旅館「 斎春 」。度重なる災害で、借金がかさみ、身動きが取れない状態にあった。大土さんは、冷蔵庫に残っていた干物などを全国の支援者に呼びかけて通信販売を開始。少しでも在庫を売りさばいて、 「 斎春 」 の資金につなげたいと取り組む。

課題は、ウクライナ情勢の陰に隠れて、地震の被害がほとんど報道されないこと。 BOND&JUSTICへの寄付も通常の10分の1程度しか集まっていないという。それでも「あきらめない」。「311では前を向けたけど、今回はちょっとなという人が多い。」度重なる災害で心が折れている人が多いと指摘する。「少しでも福島に思いを寄せてほしい」そう語る。

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