東京電力福島第一原子力発電所事故後に甲状腺がんとなった子どもたちを経済的に支援している民間団体が20日、記者会見を開き、福島県内で見つかっている甲状腺がんの再手術数が増えていると報告した。
データを公表したのはNPO法人「3.11甲状腺がん子ども基金」。2016年12月から今年度までに療養費を給付した180人について、再手術数や放射線治療の一種であるアイソトープ治療(RI治療)の実施数を報告した。それによると、福島県内で療養費を申請した115人のうち、再手術をしたのは20人。年代が若いほど、再手術に至っている割合が高く、事故当時10歳から14歳の年代では全体の2割にあたる10人が再手術を経験。4歳から9歳では23.8%にあたる5人が再手術を受けたと公表した。
再手術、RI治療の人数と割合(福島県)
事故当時年齢 | 人数(男女) | 再手術 | RI治療 | RI複数回 |
---|---|---|---|---|
4-9歳 | 21人(13:8) | 5人(23.8%) | 5人(23.8%) | |
10-14歳 | 49人(23:26) | 10人(20.4%) | 5人(10.2%) | |
15-18歳 | 45人(16:29) | 5人(10.2%) | 4人(8.9%) | 1人(2.2%) |
合計 | 115人(52:63) | 20人(17.4%) | 14人(12.2%) | 1人(0.9%) |
「3.11甲状腺がん子ども基金」2022年3月20日公表データ
また申請者ベースではあるものの、最近になって再手術が増えていると指摘。2021年の申請では、事故時6歳から14歳の年代で3件の再手術があったと報告した。さらに、RI治療も2021年度中に7件もの申請があり、このうち4人が事故時10歳未満の患者だという。
福島県立医科大学(福島医大)で多数の患者を執刀してきた鈴木眞一教授は2020年2月の国際シンポジウムで、再手術の割合は6~7%程度と発表したが、これよりはるかに多い割合で再手術が行われいる可能性がある。一方、穿刺細胞診で悪性の疑いと診断されながら、6年間、経過観察(アクティブ・サーベイランス)を続けていた10代患者が全摘となった例もあり、代表理事の崎山比早子さんは、国や福島県が将来、見つけなくてもいいがんを見つけているとする「過剰診断」論には根拠ないと批判した。
全摘患者が半数を上回る福島県外の甲状腺がん
同団体では、福島県外15都県の患者にも療養費を給付しており、これまでに62人に療養費を交付している。このうち、60人がすでに手術を終えているが、半数を上回る31人(51.7%)が全ての甲状腺を摘出する全摘手術を受けていることを明らかにした。福島県外では、自治体による甲状腺検査が実施されていないため、自覚症状によってがんが見つかるケースが多いという。
同団体では、福島県では全摘例が少なく、早期発見の利点が生かされていると指摘。「事故当時年齢の若い人の再手術・RI例の増加は注視すべき」とした上で、医大、県、国といった行政に対し、支援の充実を求めた。
再手術、RI治療の人数と割合(福島県外)
事故当時年齢 | 人数(男女) | 再手術 | RI治療 | RI複数回 |
---|---|---|---|---|
4-9歳 | 13人(2:11) | 3人(23.1%) | 4人(30.8%) | 2人(15.4%) |
10-14歳 | 18人(5:13) | 2人(11.1%) | 9人(50.0%) | 4人(22.2%) |
15-18歳 | 29人(5:24) | 4人(13.8%) | 9人(31.0%) | 4人(13.8%) |
合計 | 60人(12:48) | 9人(15.0%) | 22人(36.7%) | 10人(16.7%) |
「3.11甲状腺がん子ども基金」2022年3月20日公表データ