精神障がい者を個人の住宅で閉じ込められる「私宅監置」をテーマとしたドキュメンタリー映画『夜明け前のうた 消された沖縄の障害者』が、文化庁の映画賞に選ばれながら、記念上映が中止されている問題で、 監督らが12月19日、記念上映が行われるはずだった会場で自主上映会を開催した。上映後に行われたフォーラムでは、今回の文化庁の対応について厳しい批判が相次いだ。(動画はノーカット版)
『上映中止を問う なぜ隠すのか』と題された上映会とフォーラムを主催したのは、同映画を制作した原義和監督と配給会社の新日本映画社。映画で描かれた精神障害者の遺族から、文化庁に対して「事実関係が異なる」な抗議があったことから、文化庁が「遺族の人権を傷つける可能性がある」と上映を見送ったことに対し、原監督は、映画に事実関係が異なる点はなく、遺族の人権も傷つけてはいないと主張。遺族の一方的な抗議をもとに、文化庁が上映取りやめを決めたことは、国民の知る権利や表現の自由を奪うと批判した。
フォーラムには、精神障害者の当事者らも登壇。日本では 1900年(明治30年)にできた精神病者監護法 以来、現在に至るまで、国家が家族に義務を負わせて、精神障害者を閉じ込めてきたとして、文化庁を含む、日本政府こそがこの問題に向き合い、批判を受けるべきだと指摘した。
また、津久井やまゆり園事件を考え続ける会の堀利和さんは、やまゆり園の被害者が今も匿名報道であることと問題性が通底していると指摘。障害者が家族によって名前を消される構造があるとしたうえで、過去の出来事に目を閉ざしてはならないと訴えた。
映画『夜明け前のうた 消された沖縄の障害者』は、1900年(明治30年)にできた精神病者監護法のもと、合法化されたいた「私宅監置」を取り上げたもの。日本では1950年に禁止されたが、米軍占領下の沖縄では1972年の日本復帰まで制度が続いていた。映画は、丹念な聞き取り取材をもとに、その実態を明らかにした問題作で、今春から劇場公開され、今年の文化庁映画賞・記録映画部門の優秀賞に選ばれた。
しかし、私宅監置されていた男性の遺族が、事実と異なる部分があるなどと上映中止を求め、文化庁が延期を決定。これに呼応して、自治体などで決まっていた上映会が相次いで中止となった。
映画「夜明け前のうた 消された沖縄の障害者」公式サイト
https://yoake-uta.com/