劣悪な外国人の労働環境を改善しようと、外国人労働者の問題に取り組む労働組合や弁護士らが12月7日、国会議員会館で報告集会を開いた。会場では過酷な労働を強いられてきた技能実習生らが次々に登壇し、過重労働で体を壊しても、労災が認められない実態を報告。外国人の労働力が必要なのであれば、労働者としての権利を保障するよう環境を整備すべきだと訴えた。
「仲間がどんどん壊れていきます。技能実習生を助けてください」
「守ろう!外国人労働者のいのちと権利」と題されたこの集会を主催したのは、技能実習生の事件弁護などを担当する弁護団体や外国人労働者の問題に取り組む労働組合など。ベトナムから3年前に来日した技能実習生は、腕に三角巾姿で登場。過重労働で体を壊しても、労災が認められない過酷な実態を報告した。
女性が従事したのは、大手コンビニチェーン「セブン・イレブン」の総菜加工作業。一緒に作業していたベトナム人実習生が帰国した後も人員の補充がなく、重たい食材の運搬や大量の餃子を包む作業を1人でこなさなければならなかったという。次第に左手首の腫れがひどくなり、最終的には手術を受けるほどの損傷を負った。
しかし、労災について会社に相談しても「症状が出てすぐに申し出しなかった」などと取り合ってもらえなかったという。その後、支援団体に相談し、1年かけて労災が認定された。実習生は「技能実習生が安心して健康なまま働けるように、助けてほしい」と訴えた。女性のように、過重労働による身体的なダメージで働けなくなり、帰国を強いられる実習生が後を絶たないという。
実習生「失踪」裏にある過酷な労働
また劣悪な労働環境に“失踪”せざるを得なかった技能実習生の報告もあった。ミャンマーから来日した実習生らが働いていたのは、名古屋市の小さな弁当工場。早朝4時から9時まで休みなく働き、朝食が食べられるのは朝9時を過ぎてから。虫がわいた弁当の残飯処理や、熱風の中で洗浄作業をさせられていたという。
寝泊まりのために用意された部屋は5畳一間。そこに3人で雑魚寝させられた。にもかかわらず、家賃は一人2万円。部屋は不潔でネズミなどの害虫がわき、トイレは大量のハエと悪臭で使用できないほどだったという。管理団体など多方面に改善を訴え続けたが、最終的に失踪する決断に至った。ミャンマーの情勢も悪化しているため帰国は難しく、現在、難民申請を行っている。
機能していない管理団体
外国人技能実習制度は、「技術移転」の名目で来日させているものの、その実態は人手不足を補うための「労働力」調達にすぎず、劣悪な雇用環境、低賃金労働、賃金未払い、ハラスメントなど人権侵害の温床となっている。2017年には「外国人技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が施行されたが機能せず、国連の人種差別撤廃委員会やアメリカ国務省の「人身売買に関する報告書」でも「現代の奴隷制」などと繰り返し批判を受けてきた。
JAM在日ビルマ市民労働組合のミンスイさんは「なぜ実習生の失踪が頻発するのか、その背景をきちんと把握すべき。技能実習制度そのものの体制を政府が変えるべき」と訴えた。現在日本の在留外国人労働者は約172万人(2020年10月時点)そのうち約38.4万人が技能実習生として働いている。