【世界のオルタナティブメディア】パク・ドヨン(韓国)
2008年のG8サミットの時、レーザー光を使ってビルの壁にメッセージを映し出すアートプロジェクトを行い、日本のアクティビストを刺激した韓国のパク・ドヨン。去年10月に解散したメディアクション(Media Cultural Action)の中核メンバーだった。現在も大工をしながら、ラディカルな表現を模索している。
私が所属していたメディアクションは2005年のAPEC(アジア太平洋首脳会議)に対抗するために結成されたグループで、50人ほどのメンバーがアートや放送、教育など実験的な試みを行っていました。私がこうした活動を続けているのは、人々の生活を傷つける状況や構造が嫌いで、それを変えていきたいからです。メディアクションは当初の役割を十分果たしため、自然な形で解散に至りましたが、私は今も韓国内や世界のメディア・アクティビストを結ぶ活動をしています。
実は私の父は在日韓国人で、私は大阪で生まれです。一歳の時に家族でソウルに引っ越し、8歳の時に父親が亡くなりました。それ以降、母親一人で、私と一歳年上の姉を育ててくれました。政治に関心を持つようになったのは高校の時。歴史の先生がとてもラディカルな人で、歴史をはじめ様々なことを話してくれました。私は刺激を受け、自分でも勉強しました。それで「目覚めた」のです。多くの人は、生活、アート、運動はそれぞれ別のものだと思っていますが、私は全てが繋がっていると考えています。皆が良いコミュニケーションをしながら、一緒に暮らしていける社会になればと願っています。
韓国のメディア運動は活発ですが、私が違和感を持っているのは「市民メディア」という言葉です。「市民」とはいったい誰なのか、そこが分かりにくい。私はピープルズ・メディア、オルタナティブ・メディアといったほうが良いと思っています。
また、イ・ミョンバク政権は、各地のメディア・センターの財政支援を次々にカットするなど問題です。しかし、政府から支援を受けると、政府は活動の内容にまで干渉しようとするので、それにも疑問を感じています。多くのメディア・アクティビストも同様に考えていて、状況を変えようと盛んにロビー活動を行っています。できればアクティビスとたちが共同で基金をつくり、人々から寄付を集めてそれを分配するような仕組みをつくりたいです。(インタビュアー 松浦哲郎)