バタリーケージの鶏舎(アニマルライツセンター提供)
自民党の衆議院議員だった吉川貴盛元農林水産大臣が大臣在任中に大手鶏卵メーカーアキタフーズの元代表から現金500万円を受け取った疑いで捜査を受けている。現金との見返りに、アキタフーズ側が吉川氏に求めたのは、ニワトリの「飼育基準」の引き上げに反対することだったとされる。
鶏舎めぐり何が起きているのか。認定NPO法人アニマルライツセンターの代表理事・岡田千尋さんに動物の福祉の視点から養鶏をめぐる問題を解説いただいた。
岡田さんによると、ヨーロッパなどでは1960年代から動物の福祉を求める消費者の声が高まってきた。なかでも英国では、家畜の劣悪な飼育管理を改善するために「動物の5つの自由」という原則が提唱された。
「動物の5つの自由」とは、「飢えや渇きからの自由」「痛み・負傷・病気からの自由」「恐怖や抑圧からの自由」「不快からの自由」そして、「自然な行動をする自由」のこと。現在では、EU指令に取り入れられているほか、国際原則となっているという。
こうした中、家畜の衛生環境の向上に取り組んできた国際機関「国際獣疫事務所(OIE)も、人間と動物と環境の全てを包括的に捉える「ワンヘルス」という考え方を重視するようになり、動物福祉の観点を盛り込んだ家畜のガイドラインを定めるようになってきた。
バタリーケージの鶏舎(アニマルライツセンター提供)
日本では今でも、ニワトリをカゴに入れて飼う「ケージ飼育」が主流だが、欧州では、「ケージ」を使わない「けーじフリー」の運動が広がり、卵市場の半数を平飼いの鶏卵が占めるようになっている。OIEが鶏舎に止まり木などを設置するなどを求める新たな飼育基準案を示していたのは、こうした背景があった。
現金との見返りとして、アキタフーズ側が吉川氏に求めたのは、この「飼育基準」引き上げを阻止するためだったと見られる。日本の養鶏業者は農水省に対して働きかけを強めていたが、国内のOIE連絡委員会の臨時メンバーにも選ばれた吉川氏は中でも抵抗していたという。
https://arcj.org/
鳥インフルエンザ発生鶏舎のほとんどがウィンドウレス
平飼いを基本とする飼育基準を阻止する一方、アキタフーズをはじめ、農水省も補助金を出して後押ししていたのが、ウィンドウレス鶏舎だ。
ウィンドウレス鶏舎とは文字通り窓のない養鶏場で、温度、水や光などを全てコンピューターで管理している。日本では養鶏場の大規模化が進められており、鶏インフルエンザに強いとの理由で、農水省はウィンドウレス養鶏場の建設費を半額を負担する補助金制度を実施している。このため、近年、建設された養鶏場の多くがウィンドウレス鶏舎だという。
ところが、11月上旬から12月28日までに国内の養鶏場で確認された鳥インフルエンザ31カ所のうち、採卵を行なっている養鶏場17カ所は、1カ所を除く16カ所がウィンドウレス鶏舎であることがわかった。農水省の疫学調査と自治体の情報をもとにOurPlanetTVが確認した。
116万羽を飼育していた千葉県いすみ市の養鶏場もウィンドウレス鶏舎。どこも大規模なため、鶏インフルエンザ発生鶏舎で飼っていた鶏は383万5000羽にのぼる。この全てがガスなどで殺処分される。
陸上自衛隊 第1空挺団2020年12月24日のツイッターより
過去最大の被害となる千葉県いすみ市の養鶏場では、大型のポリバケツに20羽程度の鶏を入れてガスで殺すが、116万羽がいるため、1日10万羽ずつ殺処分することを目標にしている。28日午後3時までに全体の半分にあたる687,290羽を処分した。焼却処分をするには数が多すぎるため、埋却を併用するという。
アニマルライツセンターの岡田さんは、ウィンドウレス鶏舎だと鳥インフルエンザにならないというのは科学的根拠がないと批判。大規模飼育により、かえって被害が大きくなっている可能性がある。
陸上自衛隊 第1空挺団2020年12月24日のツイッターより