原子力規制委員会は2月18日、原発事故などで放射性ヨウ素が放出した際、甲状腺がどの程度、被ばくしたかの測定をする実施体制を決める会合を開催し、計測対象者について検討した。
初回の会合では、測定の対象者を決定した。計測の対象地域は、原子力災害対策指針でUPZ(緊急時防護措置準備区域)と定められた5キロから30キロ圏内のうち、放射線プルーム通過後に毎時20マイクロシーベルトを超えるような状況(OIL1・2)となった地域を対象とすることに決まった。原発5キロ圏内のPAZ(予防的防護措置区域)や、UPZ圏内ですでに避難している人は対象としない。
また年齢的には、将来甲状腺がんになるリスクが高い19歳未満の子ども、妊婦、授乳婦に加え、乳幼児の保護者も計測対象に含めることとした。従来の手順では、体表面スクリーニングを実施し、一定の線量を超えた対象者に対し、甲状腺被曝量の詳細な調査をすることが定められていたが、新たな方針では、モニタリングポストによる空間線量率を判断の基準とする。
東京電力福島第一原子力発電所事故では、事故から15日以上経過した3月26~30日、福島県いわき市、川俣町、飯舘村で0歳から15歳の子どもを対象に甲状腺を計測した。しかし、6万人規模の調査を実施したチェルノブイリよりはるかに少ない。また、機器が重さや住民に不安を与えるといった理由で、詳細な検査は一切、実施されなかった。
このため、福島県が実施している甲状腺検査で200人を超える甲状腺がん患者が見つかっているにもかかわらず、事故当初のヨウ素による内部被曝線量が分からず、線量とがん発症の関係について調べることが難しくなっている。しかし新たな方針でも、検査対象者は極めて限定的になものとなった。
会合では3月以降、計測方法などを議論し、4月中には報告書を提出する。その後、原子力災害対策指針の改訂案に盛り込み、パブリックコメントを実施するとしている。
資料
https://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/other_meetings/20210210_01.html