30年前、激しい体罰が問題となった戸塚ヨットスクール。「体罰の目的は人間の成長にある」という揺るぎない信念をもつ戸塚校長の下、現在もこのスクールは営まれている。本作品では、このスクールを通して、現代の「教育」がはらむ問題が浮き彫りになる。
この作品は現代の教育がはらむ二つのジレンマを提示している。一つは「体罰は教育か、それとも暴力か」というもの。もう一つは、社会制度の不備がもたらした陰鬱な現実。行き場を失った若者の多くは、社会から充分なサポートを受けることができていない。最終的に彼らは、親からの最後の望みを背負って、戸塚ヨットスクールのような「自己変革の場」に行かざるをえなくなる。そして結局報われずにあるものは失踪し、あるもの自殺するという厳しい「現実」もそこにはある。
この作品を観終わったあと、私は心の底からわき出るやり場のない怒りを感じてしばし呆然とした。どちらかといえば私も、日陰の人生を送ってきた人間だ。本作品で描かれる、現実に苦しみ、そして飲み込まれていく若者像は、決して他人事ではなかった。
本作品における問題提起の核心は、より構造的な観点から教育問題に切り込んだものだ。その意味で、あらゆる人に一度は観てほしい作品だと感じる。今、日本の教育の現場で何が起きているのか。今、私たちがすべきことは何なのか。そのことに気づくはずだ。問題を直視し、社会全体で議論すべき時にきている。先延ばしは許されない。
（OurPlanet-TVインターン 大里宗也）
監督：齊藤潤一（2010年／日本／98分）
公式サイト
ポレポレ東中野ほか全国順次公開中
≪公開記念イベント≫
■日時：2月17日(木) 19時の回上映終了後
＜登壇者（予定）＞
是枝裕和（映画監督）
齊藤潤一（『平成ジレンマ』監督）
阿武野勝彦（『平成ジレンマ』プロデューサー）
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■日時：2月19日(土) 14時40分の回上映終了後
※この上映回は、東海テレビドキュメンタリー＜傑作選＞『光と影〜光市母子殺害事件 弁護団の３００日』の上映です。
＜登壇者（予定）＞
松江哲明（ドキュメンタリー映画監督)
※会場は共にポレポレ東中野
http://www.mmjp.or.jp/pole2/
